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ノンジャンル

tripper!

   

馴染んだ重さが指に心地よい。

1度「チガウモノ」を知ってしまったからこそわかる、その違い。
今度こそ、あのキラキラの音を、追いかける。

そして洸の動きが、紗菜依に新たな境地を見せる――――。

※作中の音楽表現について。作者の知識が完全ではなく、また作者の主観の交じった描写も見られます。ご了承のうえお読み下さい。

 

 馴染んだ重さが指に心地よい。
 瀬名の言葉を、理屈で無く体感した。
 ピアノがあってこそ、紗菜依は自分の音を奏でられるのだ。

 今度こそ、追いかける。鼓膜に焼き付いて、消えてくれないあの曲を。
 弾む。指が、音が。
 さっきは到達できなかった、いちばん高い所まで一気に駆け上る。
 
 trip、する。

 強制的に高みに押し上げられる陶酔感に、その場の全員が酔いしれた。
 それはKNOWSの曲であって、既に彼らのものではない。それ程に圧倒的な存在感。
 ピアノ1台で奏でられる音色の中に、不意に新しい音が混じる。
 歌詞が、乗る。
 洸が、紗菜依のピアノに乗せて歌っていた。
 ふたつの音が混ざり合って溶け合って、ひとつになっていく。
 割れた欠片が繋がるような、パズルのピースが嵌るような一体感。

 紗菜依は歓喜と困惑を覚えながら、それでも旋律を追い続ける。
 止められない。止めたくない。
 補い合って、更に高い所へ――――いや、あるいは底なしの沼に嵌ってしまったのかもしれない。
 麻薬のように、甘美で抜け出せない。

 

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