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スペシャル・ハンティング

   

「ははは、それそれ、ほら、どうだっ、逃げてみせろっ!」
 やがて、群れからはぐれたシマウマを見つけた打田たちは、今までよりもハードに行動を開始した。後ろに回り込むことすらせず、横から、まるで的にでも対するように無造作に射撃を開始した。
 粗雑で、稚拙とさえ言える動きだが、長い間人から撃たれたことがなく、また、間近で接することもなかったシマウマたちは逃げることさえできないまま弾を受け、ばたばたと倒れていく。
 草食獣の甲高い末期の声がしばしの間響き渡り、血と火薬の匂いだけを残して辺りは静かになった。
「大した戦果ですな、打田さん。しかしこれではボロボロになり過ぎて、毛皮としての加工も難しい。割り引かれるはずの料金が乗ってしまいますが……」
「やや、全然構いませんよ。僕は得をしようとここに来ているわけじゃあありません」
 休憩をするために戻った車の中で、案内役に声をかけられた打田はにやっと笑った。
 少々の返り血を浴びたその表情は、大人しい教師のものとするには猛々しすぎるものがあったが、彼を眺める他の当事者は、眉をひそめるどころか苦笑すらしない。
 彼らもまた、打田とまったく同じ表情をしているからである。
「へへっ、さすがに学校の先生だけあって、優等生でいらっしゃるぜ。俺は違うぞ。苦労してここに来たのは大儲けをするためだ。何しろ仕留めちまえば飼育の必要もなくなる。俺のクニでも顧客は多いんだ」
 打田と向かい合う形で座っているヨーロッパ系のやや太った中年は、窓からにょきりと猟銃を出して上空に一発弾を放ってみせた。 驚いて飛び出したカラフルな色の鳥たちに向けて、さらに、二発三発と見舞っていくが、銃口が一定していないため当たらず、舌打ちとともに引っ込めることになった。
 もっともその苛立ちも深刻なものではない。何故なら稼ぐために撃っているわけではないからだ。
「まあまあ、お二人とも。スペシャル・ハンティングはまだこれからです。ひと晩も走っていけば、象やライオンの群れに追いつきますよ。GPSの信号を辿っていけば、すぐですよ」
 案内役の若者が言う、「スペシャル・ハンティング」に、打田たちは参加していた。
 費用は相当にかかるが、本来厳重に保護されているはずの希少な野生生物を好きなだけ仕留めることができるという好条件に、打田たちは飛びついた。
 もちろん国定公園で希少種を撃つなどという行為が法律で認められているはずがない。しかし、動物レンジャーたちを買収し、国の上層部とも裏のパイプを築いているので、後々面倒なことになることなど有り得ず、打田たちは好きなだけ「殺し」を楽しんでいた。 撃った動物たちの剥製や毛皮もまた闇市場で高値で取り引きされ、その収益でマフィアや他の密猟者への「配慮」も怠らない。シンプルだが、極めて人気が高い催しだった。

 

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