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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

探偵の眼・御影解宗の推理 【嘆きの双子】11

   

 警察がきて事情聴取がはじまった。

 長野県警の速見警部と望月警部補が客間に集まって事件の関係者と城里家、そして探偵たちがいる。

 疎ましそうに速見警部は氷室探偵のことを悪く言った。

 しかし、その部下がきているだけで見下されているような視線を御影はあびていた。

 ついに御影がここにいる理由を話すことができる。

 殺された古我と犯人の長柄には15年前、この城里家で起きた幼児誘拐事件が関わっていることを指摘した。

 誘拐された幼児とは、眼前にいる陽太と美姫の双子だ。
 
 

 その因縁絡みで起きた事件が幕を開けた。

 

 客人らは城里家で起きた事件について事情聴取されたことで憤慨していた。

 台所への立ち入りを禁じているのを見て足早に去っていった。そして口々に噂は吹聴された。

“だれかが、だれかを殺した”。

 駆けつけた双子の陽太、美姫が、客人らを一蹴するひと言をいって引き下がらせた。

「関わろうとすれば痛手をうけるかもしれない」

 ほかの執事や家政婦、コックは昨夜片付けをして遅くなっても帰っていった。その日かぎりの臨時のお手伝いだった。ホテルやレストランで働いている城里グループの傘下の従業員たちが内輪のパーティーのときだけ召集される。

 いま責任者の警部の青く光る冷たい目で犯罪者とその関係者の数名だけをのこして隔離している。

 客間に集められたのは、京介、美咲、陽太、美姫、そして長柄が長テーブルの座席についていた。

 輪都はテーブルの端でパソコンをひらげていた。御影のサポートがいる状況に移り変わったからだ。

 御影は立ったまま窓の外を見ていた。客人らが自家用車で去っていく姿を見送っていた。

「あなたもすわりなさい」

 御影はすわった。

「わたしは望月 廉太郎警部補です」

 ややガタイのいい体育会系の刑事がいった。

 冷ややかな青い目の男がいった。「あなたは事情聴取をのがれているようですが」

 御影はかしこまった。迫力に押し負けていた。

「東京の氷室探偵事務所の探偵で御影といいます。こんかいは調査依頼を受けましてうかがっていたところ、このような事件にでくわしました…」

 事情聴取というより身分をあきらかにしてとりあえずは詳しいことは聞かれずにすんだだけだ。

 冷徹さをかんじさせるそんな不安をもたらせる男のにらみかたに御影はすこし怖じ気づいていた。

「氷室探偵の…、そうか、私は探偵に助力している警視庁のふがいなさを感じてならない。ほんとうは外部の人間をいれる必要なんてないのに。我々だけで捜査すればじゅうぶんだがどういうわけかいつもその名を全国の警察署できかされる」

 御影は刑事の熱気に圧倒されていた。

「熱くならないでください。速見警部──」

「個人的主観がはいってしまってもうしわけない。私たちはそれなりに刑事としての役目を果たせばいいのです。上の脳なしの決断にいちいち腹を立ててもしかたがない」

 すかした感じの警部登場だ。御影は圧倒されっぱなしだ。

「私は速見 総石(ハヤミ ソウセキ)警部です。たしかに氷室探偵にはお世話になっていると思います。警察として…、彼の洞察力、発想力は驚かされるばかりです。とかく残念なのは、彼は刑事になるべきだった。警察にならなければできないこと、見れないこと、調査できないことがたくさんある。そういう警察特権の状況、情報に直面できないからたまに息詰まる。そのたびに警察に媚びをうって仮をつくり調査費用を要求する。まるで借金の取立て屋のようだ。まこと身勝手ではなはだしいかぎりの生業だ、探偵というのは…」

 御影は押し黙るしかない。探偵は警察よりも忌み嫌われやすく、鼻つまみにされるのもしばしばある。警察も蚊をはらうように探偵を煙たくおもっている。しかもここは東京ではない。氷室探偵の名が霞むのはしかたがないこと。

 日本じゅう探しても氷室探偵ほどにならないと許可されない。氷室探偵は元刑事の経歴をしらないようだ。もっとも氷室自身もこの経歴は削除したかったらしい。

 

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