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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

探偵の眼・御影解宗の推理 【嘆きの双子】11

   

 古我 幸治(こが こうじ)、稲場 一晴(いなば かずはる)、誘拐犯のリーダー、稗田 重三(ひえだ しげぞう)が当時の誘拐犯だった。

「この三名のことはそこまで大きくとりあげられることはなかった。だが、もっとこの事件には奥深き裏があった。警察はどういうわけか当時のことをあまり真剣に捜査に力を入れていなかったとみえる」御影は速見警部に責任転換するような眼差しをむけた。

「私は当時この附近の担当ではない」速見警部は押しつけられる責任から目をそむけた。

「まあ、そんな意固地にならず…俺がいいたいのはそういうことではないので。この三名の関係性が希薄であったもので、もっと人物をしっかりと調べるべきだった。長柄さんの旦那がなぜ射殺されたことを大きく問題にしなかったのか、威嚇もしくは四肢を狙って動けなくするといったことができれば死なずにすんだはずだ。簡単に命を奪ったがために長柄さんは復讐しなければならなくなったのだから」

「なに」速見警部だけではない、その場にいる全員が御影に視線をむけた。

「長柄さん、古我を殺したのはどうしてですか、“なぜいまになって”」御影は神妙な面持ちでたずねた。

 いまになって、小さい声でだれかがそういった。

「いろいろ私にも都合があって、でもほんとうになんでいまになってかしら、自分でもわからない。これだけ長い年月の時間があったのに、結果衝動的に古我を殺していたなんて…たぶん探偵さんがきて気持ちが焦ったのかもしれない。だから予定をはやめた。古我を殺す計画を」

 御影と輪都はけして有能さをみせたわけではない。長柄はなにか畏怖を感じていた。そのため長年抱いていた殺意の復讐を果たすならいましかないと覚悟を決めたのだ。

「探偵さんがまたくると古我が電話口で話しているのをきいた。それで恐くなって、もしかしたら古我の罪の証拠をみつけて私の恨みを晴らすまえに捕まってしまったらと思って…“私が警察で拘留されることもある”。だから屋敷を空けているうちに古我が出ていってしまったら困るでしょ。殺す機会を失ってどこに行ったかもわからなくなってしまう。どうせ京介夫妻は辞めていくひとの今後をたずねることなどしないから──」長柄はちらっと窓からのぞく青空を見つめていた。

「それで気がすみましたか?」御影は人を殺しておいて満足したのかをたずねた。

「ええ、それはもう…」うっすらと笑みを浮かべる長柄はそのまま透けて消えてしまいそうだった。

「長柄さん、あなたの今の証言には矛盾がある。なにもしていないのに警察に逮捕されるわけがない。古我が出て行くこともない。なら、なぜ逮捕される必要性があるんですか、その電話は探偵事務所のこの輪都が連絡をいれたものです。そのときはまだ犯罪はなにも起きていなかった。ならなぜ…」御影の言葉には石をかつぐような重みがあった。

「えっ」長柄は動揺を露わにした。

「自白したようなものですよ」御影はゆっくりといった。

 

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