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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

探偵の眼・御影解宗の推理 【嘆きの双子】11

   

「どういうことだ探偵──」望月警部補は何がなんだかついてこれずにいた。

 しかし、それは全員がそうだった。輪都と話した会話を聞いて長柄が立ち聞きしていた。ただそれだけだ。それがなぜ犯行の引き金になったか不透明すぎるのだ。

「探偵、そこは穴があいてはいないか?」速見警部がここぞとばかりに揚げ足を取った。

「そうです。そこが肝心なんです。そこが長柄さんが冷静さを欠いて衝動に走ったんでしょう」

 輪都が静かに携帯電話を渡した。

「これは古我さんのプライベート用の携帯電話です。さっき部屋を調べました。あの人の部屋に何かがあるか調べるのは当然ですからね。それで見つかったのは携帯電話です。ロックをかけておらず、まったくもって警戒心はないようですね。もうしわけないが中をみたら驚きました。アドレス帳もメールもそうですが、だれかとつながる連絡先がいっさい登録されていない。要するに、古我という人物は相当な記憶力を持っているようです。電話番号をおぼえているんでしょうね。掛けては削除している。そういう使い方をこの携帯電話ではしているようです。ですが通話履歴をみたところ、一箇所だけ消し忘れがあったようです。それが輪都が連絡したのちにこの携帯電話で掛けていた。でも登録していないから名前は不明です。この番号心当たりはいませんか?」

 御影は二つ折りの携帯電話の画面をみせた。すると全員が見覚えがあるようなそわそわした態度に変わった。

「いったいどんな話をされたのですか、京介さん」御影は主である京介に携帯番号をみせた。

「いや、わたしではない」

 嘘をついている京介を妻や子どもがみている。あきらかに京介の番号だと顔色で白状している。

「では、発信してみましょう。刑事さん、よければお願いできますか」

 御影は速見警部に頼んだ。

「よかろう。そういうことであればかまわない」速見警部は携帯電話を取り出した。

 手をのばし抑制するように京介は観念した。「待ってくれ、わかった。白状しよう。たしかにその日、古我から電話を受けた。だが、よくわからない内容だった。探偵がきてもよけいなことはいわず、あしらってくれと」

 御影の白い目が京介を見透かすようにのぞきこむ。輪都ははじめての顔だった。

「ほんとうか、そんなはずない。俺の推理では古我はいったはずだ。ここを出て行く代わりに金をよこせと、そしてここにいたということは公言するなと、そうだろ」御影の鋭い口調はそれまでの落ちつきのある話し方ではなくなっていた。

「き、きみ…私が嘘をついているというのかね」

「探偵、辻褄合わせのために城里さんをおびやかすような発言は見逃せない」速見警部が立ち上がり御影と肩をならべた。

「ふん」鼻で笑う探偵だった。「すみません、わざと波風立てて感情を煽り立てるのが探偵ですから、お気を悪くしたならあやまります」

 溜め息を吐いて席についた速見警部だった。

「その話を聞いて長柄さんは恩恵のあるこの屋敷を護ろうとして休みをとり、甲府市に行き稲場を刺殺し、昨日の朝に古我はそのニュースをしった。そして昨夜もどってきた長柄さんは恐れおののく古我を今朝、話し合いをしているところをガラスの灰皿で殴打し殺した。そんな筋書きかと思ったのですが…」

「ちがいます。ほんとうですよ。古我はただ急に関係者を集めて週末パーティーをしようといいだしたんです」京介は頬を膨らませながらいった。

 美咲や子どもたちは首をかしげていた。
 
 

≪つづく≫

 

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