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ロボット育児日記36

   

 高級なコーヒーは、上品な香りは勿論、飲んだこともない深みのある香ばしい味がした。
「美味しい」
「そう? よかった。私は飽きちゃったけどね」
「え?」
「このコーヒー一時期好きでさ、いっつも飲んでたんだけど、飽きちゃってずっと飲んでなかったのよ。事が済んだら、持って帰っていいわよ」
「あ、ありがとうございます」
 なんかちょっと、恥ずかしい。もっと、満嗣さんの嗜好とか色々知らないきゃなと思った。
「ところで、俺のアパートで何を調べるんです?」
「さっきみたいな盗聴機とか、あと篠山の指紋と何かDNAが取れる物が欲しいの。霞の指紋は以前貰っているから大丈夫だし、ウサちゃんの分も以前調べている。問題の篠山誠太の指紋が警察でも保管されていた。研究室に入るための鍵が指紋だったの。指紋も年を重ねるごとに少しずつ変化するのだけど、それもコンピューターで予測出来る範囲だから大丈夫。ただ、篠山は天才だから、全てお見通しってこともあるだろうけど」
「そうですか。警察に物色されるのも、慣れてきましたね」
「そうねえ、あんたには悪いけど何回目って感じだもんね。そのうち、大家さん怒って追い出されたりして」
「もう、悪い冗談やめてくださいよ。そうなったら、俺マジで行くとこ実家しか無くなります」
「ここに来たら?」
 俺は、きょとんとして言葉を失った。
「ジョーダン」
 悪い冗談だ。
 けれど、この冗談が現実になるとは思ってもいなかった。
 3日程して、大家から物凄い剣幕で電話が鳴った。
 何度も警察に入られているのは勿論、知らない間に子供を引き取った事に関して、同じアパートの住民からクレームが殺到しているとのこと。アパートの評判にも関わることなので、直ぐにでも出ていって欲しいと。
 出ていって欲しいと一方的に告げられ、どうしようもないのだが、直ぐにといわれても行く場所がないので少しだけ猶予が欲しいと告げた。大家がくれたのは、たった1週間。丁度、明日アパートに戻れる許可も下りたので、荷物をまとめなきゃいけないのだけど。はっきり言って無茶苦茶だ。
 あれから、篠山さんからの連絡はない。どうしても気になってこちらから一度だけ電話をしてみたが、電源が入っていなかった。いよいよどうしても気になり家を訪ねてみたが、既に退去されていた。
 まだ結果はでていないが、やはり篠山さんは、あの篠山さんだったんだろう。ウサ子のぬいぐるみに仕掛けられた機械も、篠山さんの仕業で……満継さんが全てに気付き始めたから、逃げてしまったってことなんだろうか。
 満継さんは、俺がマンションに来た次の日の夕方、また仕事に行ってから帰って来ていない。今夜、帰る予定らしいので、何か美味しい食事を用意して待っていることになっているのだけど。今この事態について電話しても迷惑だろうし、どう相談してもいいのか整理ができない状態だったので、いつもの如く圭介に相談することにした。
 けれど、圭介は電話に出ず、珍しく折り返しの連絡もなかった。何度か電話してみたものの、やっぱり何の連絡も無かった。
 ふと、満継さんが倒れたあの日の事を思い出して、嫌な予感がした。変なウィルスでも流行っているのかな。
 妙な胸騒ぎで、ずっと観ていなかったテレビを付けた。妙なタイミングで、胸騒ぎが的中したのか、ニュースキャスターがその事実を告げていた。
『ロボットの身体の90%の機能が破壊されるという、謎の現象が起きています。病院、警察が原因を究明しておりますが、まだわかっておりません。ただE地区のみでしか起きていないとのことで、E地区を応急的に隔離する方向で動いています』
 満継さんが、戻らないのはこのせいか。あの日の事もあるし、大丈夫なのだろうか。そして、連絡の付かない圭介も、もしかして……。
 ウサ子のいた病院が映し出された。そのあと、俺のアパートの周辺が。
 どういうことだろうか。俺が、最近関わった場所ばかりじゃないか。
 俺が、原因なのか?
 満継さんが倒れたのも……俺の……せい?
 
 

≪つづく≫

 

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