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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

怪盗プラチナ仮面 17

   

 
 
 屋上でこの宗教儀式に立ち会う直前、増子は刑事部長室で記者と雑談していた。
 

「で、どうするの? 晴天さんは書くの」

 増子の正面に、晴天新聞の警視庁キャップ・浅野恭平が肥満体をソファにそり返らせ、目を伏せている。応接テーブル上には、増子がひと通り読み終えたばかりのペーパー6枚が表を伏せて置かれていた。

「まぁ、書きますよ。もちろん協定の縛りが解けてサファイアが日本を離れた後ですが」
「解禁後か。それなら助かる」

 神戸の宝飾品展示会を前に、メディア各社間では再び報道協定が結ばれ、展示会終了後の解禁を期していた。誘拐事件でもないのにたびたび協定を結ぶのは報道機関の責任放棄だと息巻く社もあったが、所詮はお約束のガス抜きであった。

 増子は横目で浅野の顔色をうかがう。

「でも、どうなの。こんなのニュースになるの?」
「生ニュースとしてじゃ話にならないってことは、そこに名前がある加地かじって特派員に言い聞かせました」

 浅野は応接テーブルの上にあるペーパーを目で示してから、続けた。

「一応、私たちだって科学的実証性に則してニュース判断していますから。『20世紀初頭の捜査事情を振り返る囲み記事でどうだ?』って言ってやったんですが、なかなか聞き入れなくて……あ、こいつは5年前二課担(捜査二課担当記者)をやってた奴ですけど、増子さんはご存じですか?」
「私は本庁(警察庁)にいたから知らんな」
「そうですか。私はデスクでしたけど、とにかくうるさい奴で。今回も『警視庁の縛りが欧州総局に何の関係がある?』とかさんざん文句を言ってて、抑えるのにひと苦労でしたよ」
「ふーん」

 そりゃ申し訳ないな、と刑事部長は胸の内でつぶやいた。

 増子はこの半年ほど記者の「夜討ち朝駆け」をご遠慮願っている。だから単独での取材はこうして部長室か「ぶら下がり」でしか対応していないのだった。

 A4判のペーパーは、2枚が晴天新聞欧州総局特派員の加地栄一から浅野宛てのメールで、残り4枚が100年前のロンドン警視庁の書類をPDFファイルからプリントしたものだった。
 

 

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