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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

怪盗プラチナ仮面 17

   

 
 空が暗雲に覆われ、辺りが急に暗くなった。

 雲から無数の龍が舞い降りてきた。
 龍どもが巻き起こす旋風でウェストミンスター寺院は引き千切られ、ビッグベンは根元から折れて空に吸い上げられてゆく。
 雷鳴が起こり、テムズ川が一面火に覆われた。
 川を溢れ出した火焔が市内をことごとく焼き尽くし、大勢の人間が火ダルマになった。
 彼らの泣き叫ぶ声……。逃げまどう私は助けることなど思いもよらない。
 火ダルマの人体は骸骨になるまで焼かれた。すると、背中の骨からコウモリの翼が生え、骸骨たちは空に舞い上がった。
 無数の骸骨のコウモリが燃えさかるロンドンの上空を乱舞していた。どの骸骨もみな、甲高い声で笑っていた。
 脳を掻きむしるような、あの恐ろしい笑い声。耳について離れない。
 私は悪魔の勝利を見た。長年の信仰には何の意味も無かった。

 

 彼らが同じ時間に「見た」光景は共通点もありますが、必ずしも一様ではなく、テムズ川の氾濫が「火」ではなく「水」だったり、地面を突き破って現れた無数の巨大な蛇が人間を次々に食い殺したりと、一定のバリエーションがあったようです。

 詳細は添付したPDFファイルのロンドン警視庁報告書原文をご参照ください。小生は記事として出稿すべき話だと考えます。キャップのご賢察をお願いする次第です。

 欧州総局・加地栄一
 

 

「もうじき5月ですね」

 窓の外を見ながら浅野がつぶやいた。

「浅野さんは今年花見はしたの?」
「そんな……花なんか見てられる気分じゃありませんよ」

 「冗談も大概に」とでも言いたげな疲れた笑いを、晴天新聞キャップは満面に表した。子供っぽく見える顔だが、これでも46歳。新聞記者の老け方というのは不思議なものだと増子は思った。

「私もそろそろ2年ですから。またデスクに召し上げられるのかと思うと気が重くって」
「なーに言ってんですか、次期社会部長が」
「まだ早いですよ! この後は部長代理として兵隊に突き上げられる役目が控えてるんですよ」
「そういう段取りなら仕方ないでしょ?」
「他人事だと思って……。正直言うとね、大阪府警のサブキャップでもやらせてもらえないかなって」
「そりゃあり得ないね」

(大阪府警のサブだって? 言うに事欠いてよくもまあ抜け抜けと。本当にそんな辞令が出た時のツラが見たいもんだ)

 増子は内心あきれ果てたが、この男の忠勤ぶりに一目置いているのも事実ではあった。だから返礼くらいはしておこうと思った。
 

 

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