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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

怪盗プラチナ仮面 17

   

 
「浅野さんさぁ、ゴールデンウィークに弘前あたりに行ったらどう? 桜はちょうど満開じゃないかな?」

 浅野の目が輝いた。

「なるほど。きっと満開でしょう。間違いありませんよね?」
「多分ね」
「部長はどこで花見をされます?」

 「こいつバカか」と増子は思ったが、こう答えておいた。

「心で桜を見ます」

 増子はソファから立ち上がり、窓の外を眺めた。自分は物欲しげな顔をいっさい見せなかったが、浅野はペーパーをここに置いていくだろう。しかし肝心なのは、さっき報告書原文をさらっと読んだ時、最後に出てきたくだりだ。
 

≪仮面の力を最大限まで行使できる者は滅多にいない。そして極限までの使用は著しい消耗を強いるので、必然的に呪術師の命を縮めることになる≫
 

 増子清明は国家公務員上級職試験トップの成績を引っ提げて警察庁に入った。司法試験には当然、大学在学中に合格していた。「たかが司法試験ぐらい在学中に合格できない? そんな人間に生きている価値があるのか?」──そう考えていても口に出したことはない。今では試験の成績など幻想でしかないと思っている。

 東京ではとうに散った桜が、青森では今から数日後に満開になる。これも一つのイリュージョンだ。近代科学は無数の幻を作り出すことを可能にしてきた。科学が無理矢理忘れ去った古代の謎が今さら挑戦してきたからといって、それもまた一種の増幅された幻にすぎない。増子はそう考えた。

 あれは葬り去らねばならない。自分がやろうとしているのは、今までさんざん繰り返されてきたことの延長線上にある、取るに足らない小さなイベントなのだ。

 背後で、浅野恭平が立ち上がる気配がした。

「それじゃ部長、弘前で花見酒といきましょう」

 窓辺に立っていた増子は、軽く振り返って頷いた。晴天新聞キャップは部長室から去った。
 
 

*   *   *

 
 

 

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