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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

探偵の眼・御影解宗の推理 【嘆きの双子】12

   

“早朝から速報が流れた。

 山梨県甲府市で男性の刺殺体が発見されました。一人暮らしで市内の農家で働いているが、先日アパートにだれかが訪れていたかもしれないと隣の住人が話し声が聞こえたといっていました。警察は交友関係から犯人を追っているとのことです”。

 城里家にむかうレンタカーの中で、ラジオから流れる声に耳を傾けていたときに聴いたニュースだ。

 輪都は無愛想ながら黙々とパソコンをみていたが、すぐにその名を検索していた。

 その人物のなまえならしっていた。城里家の関係者や手紙に記されていた人物の素性を調べていったら15年前に遡るが、城里家の内輪にその人物の名がかかわっていた事件とつながった。

 頭の中でその殺された男のことをしばらく考えていた。なぜいまになって殺されたのか。どんなふうにどんなことで、なぜ殺されたのか。殺した犯人は…と思い思いの考えをめぐらせていた。

 稲場 祐二。刑期を終えて真面目に農作業をしていた。ぶどう園の仕事もしていたという。

「15年前の城里家誘拐事件の実行犯のリーダーです。この男を先日殺したのが、長柄さん…あなただということだ」

 ピリリッと凍てつくような冷気が漂いはじめていた。

「私が──」

「あれ、これについて白を切るのかな」輪都はパソコンのネット記事を読み漁っていた。「御影さんの推理はまちがってないと思いますよ。現に殺害されたのが一昨日の夜で、発見されたのが翌朝、隣の部屋の住人は言い争う声が聞こえたといった。会話の内容まではわからないが内輪もめのような感じだと。まるで夫婦喧嘩だって」

「両者には何かこじれるようなことがあった。もしくは旦那さんのときとおなじように裏切られた。15年ものあいだ、あなたは古我のそばにいながらも復讐のチャンスを逃していた。どうなってもかまわないといいながら、それは生き残った稲場が拘留中に面会し事実を聞いた。そのうえでなにかを言いくるめられたんじゃないんですか? 稲場にしても復讐したい相手だったからだ」御影は長柄の真横で責めたてるようにいった。

「それだけじゃない、これみよがしに古我は新聞やネット、テレビのニュースを観るのが日課になっている。自分にかかわりそうなニュースをチェックする日々から目が離せない。だからあなたは稲場を殺した。恐怖を植えつけるために、古我はニュースをみるからね」

「おい、そのために稲場を殺して、つぎは古我を殺すと予告したのか、テレビ画面をとおして」望月が驚いた声は耳を殴るようなうるさい声だった。

「そうですよ。長柄さんはもう15年待った。つねに古我を殺すための計略をなんども起稿していたでしょう。しかもなんどもね」

 御影はペンをにぎるような手のかたちをつくり、小説家が執筆するようなそぶりをみせた。

「でも、おかしくないか…殺害予告を察した古我がなぜ、逃げなかったのか」

 望月がいてくれてうれしそうに御影は笑みを浮かべた。頭の空っぽのやつに教示するのは実に教え甲斐がある。

「それは逃げられる状況になかった。それだけです」

 眉間に皺をよせ憤慨しそうな望月警部補だった。

「なぜ、そこまでの強行におよんだのか、15年前の誘拐事件でなにを知ったのか、話してくれますか?」御影は長柄の後ろから頼んだ。

 長柄は振り返り御影の顔をのぞく。その目はやはり何かを隠しとおそうとするコンタクトレンズを嵌めたような目をしていた。

 どうやら、すべてを話すことはできないのかもしれない。

 

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