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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

探偵の眼・御影解宗の推理 【嘆きの双子】12

   

 その手紙のことがわからず速見と望月は顔を見あわせていた。

 視線を感じるも御影は無視した。話を聞かせるのはあとでいい。いまは止まらずに語るべきだった。

「あなたがあの手紙をわざわざ群馬県のポストに投函しているのは確認済みです。近くにあった店舗の防犯カメラにあなたが来店しているのが映っていた。しかも切手をその店舗で購入してレジでその切手を貼っている姿がばっちりと映っていた」

 ドライブはこりごりの輪都は、あの苦労がいま報われたことで、ノートパソコンをさささっと操作し、動画を再生して全員にみえるように画面をむけた。

「これはあなたが我々氷室探偵事務所に封書を送ったというだけの証明です。ですが、ここから糸口にするしかなかった。それなのにいったいなにを調べさせようとしていたのか、わらかなかった。もっと友好的に協力してもらえるのかと思ったが、あなたはなにもしてくれはしなかった。名のりもしない。まるで自分があの手紙を送ったことを隠そうとしていた。なんのためですか?」

 長柄は耳をふさいでいるように探偵の鋭い声に耐えていた。

「やはり染野美幸さんの名をだしたのはカモフラージュですか、執事の古我を陥れるために…探偵がこの屋敷内にいたら目障りなのはわかりますけど、何かを隠している」

 御影は昨夜のことを思い出した。自分が襲われたこと、そしてなぜ隠そうとしているのか。

「ちがうわ」長柄ははじめて真相について唇を開いた。「私はあなたたち探偵に期待していたのは執事の古我のことよ。主人のことをすべてを知ってほしかった。ほんとうの真相までは私なんかではたどりつけない。証拠をみつけることができない。でも、あなたたちならできるかもしれないと思って、名探偵の氷室さんに手紙をだした──」

 輪都は自分のパートナーである探偵は氷室名探偵の足もとにも及ばない。愕然とした表情が御影に同情していた。

「でも、意外と着眼点が鋭くて、期待できると思ったがあなたたちの推論だと方向性がかわってしまいそうだった。私が望むべき真相とすれちがってしまった。だから…」長柄はそこで御影の顔をみた。昨夜の痛手をわびるかのような憂いの瞳は謝罪がこめられている。

 御影と長柄の二人しかしらない夜更けのできごと。けして示し合わせてもいないが、黙っているところをみるとどうやら地下の存在を明るみにしたくない何かがある。

 御影はそうにらんだ。それとも長柄の口からはいえないだけかもしれない。

 このときまだ本当に地下があるかは確認していいない。あくまでも憶測である。

 淡い灯りが壁の下からもれていただけのこと。それで地下室があると思うほうがどうかしているのかもしれない。

 それを確かめたいが、いまは長柄が古我を殺したという事実と動機を解明すべきこと、稲場にいたってもそうだ。

 望月警部補が口を挟んだ。「あなたは探偵に調べてもらいたいことの意思がちがったというのか」

 長柄は静かにうなずいた。「私は旦那を陥れた誘拐犯の仲間のことが許せなかった。だから居所のわかっている稲場に面会にいった。そこで古我は生きているかもしれないといわれて、ゾッとした。それからというもの捜したわ。稲場は犯行に及ぶまで会話の中で古我についての情報をおしえてくれた。そしてついに城里家の執事をしていることがわかった。驚いたは、まさか誘拐した子どもの家で執事をしているなんて、かんがえられない―」

 だれもが同感するようにうなずいていた。

 その中でも京介と美咲の顔色が変わり背を丸めた。双子の息子と娘は動じずに姿勢をただしたままだ。まるで知らないという反応だった。古我はともかく稲場については知らないといえる相手ではない。二人は幼児の頃に誘拐したという深い傷を刻んだリーダーだ。

 顔色を変えてもおかしくないというのに。

 御影は身震いしていた。双子の反応には驚かされる。幼児の記憶に擦りこまれた恐怖が、何ごともなかったかのような反応はいただけない。むしろ両親を同情するような憐れみの表情をむけていた。

 刑事たちは異様な雰囲気を放つこの家族を静かに見守っていた。おそらくその答えを探偵はにぎっていると見据えていた。

「長柄さん、15年前の誘拐事件の真相は知っているんですね」

「はい、稲場からすべて聞きました」

「おしえてくれますか、舞台裏は俺たちでもさすがにわからないことだ。推理でいいならお話しできますけど…」御影は頭を掻きながらあえてえ未熟さを露わにした。

 輪都は冷ややかな目で探偵をみていた。一週間の苦労が徒労に終わりそうな予感を感じた。もっと深くまで答えをにぎっていたのに、あえて当事者に塩をおくるなんて。

「事実はすべて掴んでいる」パソコンの画面にはレポートがぎっしりと書かれていた。そこには15年前の詳細まで。輪都は口の端がつりあがった。

 御影は輪都にアイコンタクトをむける。長柄が口を割りそうだからレポートは答え合わせでなぞりながらみてくれ、といっているのがわかった。

「しかたない…」輪都はあきらめた。
 
 

≪つづく≫

 

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