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ノンジャンル

tripper!

   

瀬名は、紗菜依の可能性を淡々と指摘する。

「彼女が必要としているのは、洸の声だけです」

その言葉で洸が下した決断とは?

「約束しただろ。天国、見せてやるって」

そして、プロジェクトは動き出す。

 

 瀬名はじっと、当事者である筈の紗菜依ではなく洸を見つめながら口を開く。
「彼女の音は、基本的に他人と合わせるようにできていない。ピアノ1台だけで勝負する事しか知らない音です。サンプリングして使うなんてもってのほか、切り貼りしてしまえば価値は半減どころか7割落ちでしょうね。割れた仮面の一欠にはなり得ません。・・・・逆に言うなら、彼女の方でも僕達の音は必要としていないでしょう。唯一の例外は、洸の声だけ」
 最後の一言に、紗奈依はドキリとした。
 何故、瀬名には理解ってしまうのだろう。しかも、彼女自身でも自覚していなかった感情ばかりが。
 そもそも先程から使えるの使えないの、随分好き勝手言われている気がする。何故、他人に自分の音を値踏みするようなマネをされなければいけないのか。
 考えるうちにその理不尽さに腹が立ってきて、紗奈依はぎっと洸を睨み付けた。・・・・睨み付けようとして、失敗した。
 洸は、怖いくらい真剣な表情で紗奈依を見詰めていた。
 目が、逸らせない。
「――――今度のCD、まだ1曲くらい入るよな?」
 その場の全員が、ひゅっと息を呑んだ。
「洸・・・・?」
 紗菜依は、洸が何を言いたいのか分からず困惑した。

 

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