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ロボット育児日記37

   

「それだけで、犯人だって疑うんですか?」
「まあ、聞きなさい。失踪直前まで研究されていたナノマシーン細胞があるのだけど、どうやらその細胞によく似てるってことなの。その細胞を分析したくても、開発者にしかわからない。で、高度な研究機関にまわしたところ、少しだけ当時の篠山の研究を知ってる人間がいたの。その人間が、篠山の研究細胞によく似ていると証言したわ。そして、当時の篠山がこう言っていたことも。毒にも薬にもなる細胞、だってね」
「毒にも薬にも……」
「そう、篠山の判断でどうにでも出来る。そして、もしそれが本当だったとしたら、篠山は毒を選んだことになる。無差別にロボットを殺し、殺そうとした重罪人」
 篠山さんは、篠山さんのさじ加減で、多くのロボットを救うことも殺すことも出来たって事か。
「もしそうだとしたら、悲しいな。確かに、気に入らないロボットはいるかもしれないけど、例えもし人間だけになったとしたって、そんなの変わらないと思うんだけど。何とか、助けてやれないのかな。きっと、こうなってしまったのは、篠山さんだけのせいじゃないと思うし。だって、最初は薬になるための研究をしてたんだって話だったし」
 満嗣さんは、溜め息をついた。そのあと、感情のない声で告げた。
「霞が、犯人として仕立て上げられたとしても、あんたは、そう言えるの?」
 俺は、はっとした。
「私は、そんなこと言えない。警官である以上に、あんたの恋人になったのだから」
 篠山さんが、なぜ俺を選んだのか。自分の代わりの犯人が欲しかっただけだとしたら、そんなの誰でもよかったんだろう。
「私は、霞を助けるために、篠山を捕まえなきゃいけない」
 やはり、俺に疑いが掛けられているのだろう。だから、満嗣さんは俺をここへ呼んだ。バカな俺でも、さすがにわかる。
「俺、本当にバカですね」
 満嗣さんが忙しいのも、帰れないのも、きっと今は全部俺のせいだ。じゃあ、俺が諦めたら……満嗣さんは救われないし、他に被害も出続けるのだろう。
「俺、出来る限り協力しますから。篠山さんを捕まえて、犯人にしろそうでないにしろ、はっきりさせましょう」
「よし」
 と言った満嗣さんの顔を見た。少しだけ、笑っていた。
「さあ、ご飯にしよ! もう、あんたのせいで冷めちゃったじゃないの」
「あ、すみません。温め直しますから」
「お願いね」
 料理を前にした満嗣さんは、楽しそうで幸せそうで、俺も嬉しくなった。
「さあ、ウサ子は丁度いい温かさだから、一人で食べれるよね」
「うさもー」
 なんで真似したがるので、温めるフリをしてやった。気付かず、満足そうに笑う。
「さあ、いただきますしてね」
「いららきまうー」
 言い終わるのが早いかどうかのタイミングで食べ出すウサ子。この子の為にも、なんとかしないとな。
 ふと、思い出す。
「そういえば、さっきの話の後で今度は、って感じの問題なんですけど」
 満嗣さんが、前菜のサラダをつつきながら「なに?」と問う。
「俺、アパート追い出されちゃったみたいです。ウサ子のこともですけど、警察沙汰が立て続けで……迷惑だから出ていけって。ご迷惑承知に……もう少し置いてもらえません?」
「恋人なんだから、気遣わなくてもいいって言ってるでしょう。もういっそ、ここに引っ越してきたら? 霞も慣れたでしょう?」
 
 

≪つづく≫

 

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