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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

探偵の眼・御影解宗の推理 【嘆きの双子】13

   2017年11月13日  

 犯人はどこかの公園に子どもを解放すると連絡があった。

 これまで音声を変え一方的に連絡がはいり、そのとおりに行動しなければ人質を殺すということだった。すぐに刑事は逆探知器を使用。場所の特定に躍起になっていた。

「人数が足りない。もともと誘拐事件は人員がいるんですよ」若い刑事が文句を吐いた。

 京介は悪びれることもなく首を振る。「他言されては困る、あなたたちの出世にひとこと口添えをしてやるからいうことをきけ」

「そんな権限があるのか」いかつい刑事が口を曲げながら吐露する。

 一方的な電話だと一分もかからず電話を切ってしまい、逆探知は役にたたなかった。携帯電話からでおそらく車で移動しながらかけている。犯人と被害者の城里家との信頼関係が築かれはじめていた。完全に犯人にリードされている。

 後手にまわったほうが負けは必至。逆転の手がないか刑事は頭を抱えていた。

 さらに二日が経過したが受け渡し日時、場所の連絡がない。二人は焦っていた。このままでは幼児の命があぶない。危険領域にはいっている。精神状態もそうだが恐怖を植えつけられ助かってもトラウマになることがある。幼児期の恐怖は心に消えない傷を刻むのだ。

 近隣の公園附近をすべて警察に総動員させ監視させた。

 パトカーに白バイクで追跡できるよう配置していた。

「GPS」を利用した追跡が採用されたが、まだ実践経験がなかった。そのため、これの試験的に導入した。もしうまく活用できるようであれば犯人はあっというまに追い詰めることができる。

 地上を探知できるように上空からヘリコプターで追跡する。これが今回出番となった。

 当時、これは警察にとっても奥の手だった。

 逃げられないだけの思案は仕上げていた。これでパーフェクトだと刑事は自信満々に勝ち気に笑みをこぼしていた。

「どういうことだ」京介は刑事の胸倉を掴み憤慨していた。

「なにがですか」京介の手を払いのける刑事。

「なぜ、事を大きくしたんだ。これでは城里家の名や子どもたちの安否が危ぶまれる」

「まだそんなこといってんのか、もう本職の出世やなんやらいってられない。刑事二人で捕らえられないんだ。どの道助かったあと捕まえていいならおなじだろ!」

 京介は、そういうことじゃないんだ、と崩れた。

 さらに五日が過ぎた。

 やっと連絡があった。身代金受け渡し日の予定の日時、場所を伝えるための連絡がはいった。だが、どういうわけか銀行振り込みの指示の連絡をうけた。GPSのことに感づいたのかもしれない。

 たしかに作業員が屋敷に入ってから出てきたようすはない。しかもいまでは開き直ったかのように警察のパトカーが出入りしている。

 十分どこかで監視しているとみるのが普通だ。

 京介の発言はあながちまちがいではない。誘拐事件ほどもっと気を配る必要がある。逃げてしまえば人質も帰ってこないし、犯人は別のターゲットにするのであればそれっきりになってしまう。

 誘拐犯の指示を無視して警察が動いていることが知れれば、反発の姿勢ととり憤りを感じているだろう。

 あやうい状態は刑事にある。だから焦っているのだ。

 その間、身代金を得る方法を思案していたのだろう。現金を受け取るのは逮捕される絶好の好機だからだ。

 誘拐犯の中に頭のいいやつがいるようだ。特に犯罪にかけては。

「明日11時に電話を入れる。ご主人の携帯電話を用意しておけ。その電話番号は把握ずみだ。その時刻に電話を入れるから銀行のATMから送金するんだ。振込み口座はそのときに教える。そのまま操作をしろ」
 
 

 今でいうところの振込み詐欺のような手口だ。

 1990年代ではまだポピュラーな事件ではなかったため銀行の職員も警戒はしていなかった。

 

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