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アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編 第34話「それでも――――」

   

悲劇を悲劇で終わらせない。

「孤独なのは、お祖父様も同じだった。あの人は、優しすぎた……私達の国王」

『アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編』
【毎週更新】

第34話「それでも――――」

 

 
「逃げちゃった……せっかく会えたのに」

 シアンにどうしていたのか尋ねられた時、私は自分が情けなくて、何も言えなかった。彼に聞きたいことがまだたくさんあったはずなのに、どれも口に出来なかったのだ。

「だって、私には何も……話せることがないんだもの……」

 二年という長い月日を眠って過ごしていただけの私。それが悔しくて堪らなかった。
 私の時間は、無限に与えられているものではない。だからこそ、限られているし、価値があるのだ。十二歳でいられるのも後僅かだと言うのに――――。

 私の一生を全て使ったとしても、過去を変えることは出来ない。わかりきっていた事実が、今はただ切なかった。

 砂浜で波の音に耳を澄ませながら、私はシアンの言葉を思い出していた。
 未だ、戦い続けている町。抗い続ける者達。

「レッドラット――――……か」

 至るところにルイスの臣下がいるのなら、その町にもいるのだろうか。ルイスの存在を信じ、来たるべき時を求めている者達が――――。
 ぐしゃりと砂を握り潰して、私は瞳を閉じた。どうして、こんな気持ちになるのだろう。何をしていても、と感じてしまう。

 善良な民を巻き込んではいけない。
 だが、何も知らずに過ごす方がきっと彼等も辛いだろう。
 だって、私は辛かった。
 ルイスに何も教えてもらえなかったことが悲しかった。彼が助けを求められる相手は、妹の私しかいなかったのに――――。

 私は確かに敵と戦う道を選びはしたが、ルイスとは違う方法でアースに罪を償わせたいと思っている。そして、王国を取り戻した暁には、ルイスに王位を――――。

「私はあなたが王であればいいと願ってる。でも……ルイスを王にしたくはないの

 相反あいはんする思いが私の中には存在していた。

 カーネット王国を取り戻しても、私とルイスは城へは戻れないかもしれない。旧王家が招いた争いのせいで、この国は終わってしまったのだ。
 ルイスが王位に就く。それが正しいかどうかは、国民が決めることだ。それに、私達はあの場所で、あまりにも多くのものを失ってしまった。家族も友人も、全て。そんな世界で、全てを忘れて幸せに笑い合うことなんて出来るわけがない。
 私はあの苦しい過去から、逃れることも忘れることも出来はしないだろう。全ての戦いが終わった後も、私の心の傷は――――抱いた怒りは、消えることはないのだ。

 私の人生は、ルイスと別れたあの日に一度終わった。私とルイスは互いがどんなに望んだとしても、幼い頃の兄妹のようにはいられない。
 

 

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