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SF・ファンタジー・ホラー

ロボット育児日記41

   

 先程の男が現れ、ウサ子は返せないと言った。隔離だ。

 SFラブコメ!

 

 壁伝いにその先を行けば、鉄の扉の前で車を停めた。
 暫くして、その扉が開けられた。
「ここが研究所ですか?」
「そう、見た目は原始的だけど、刑務所よりセキュリティはキツいわ。最新の認識システムで、もう受付完了したみたいよ」
「すっげ」
「ここには、人間しかいないんでしたっけ」
「みたいよ。私も、正直来たの初めてだし。ここには人間の研究員しかいないし、安全性の問題なんじゃない」
「そういう事ですか」
 確かに、非力で脆い人間には、必要な事だろうと納得した。
 重々しいのは、外観だけだった。中の建物は真っ白の綺麗なビル。シンプルで無機質なデザインが、病院みたいだけど。
 満嗣さんは駐車場に車を停めると、俺達を先導して歩き始めた。不安がったウサ子が、俺にしがみつくので、俺はウサ子を抱いてそのあとに続いた。
「お待ちしてました」
 迷うことなく歩いてきたのは、白衣の若い男。若いと言っても、30歳半ばくらいだから俺より上だと見える。
「この子が例の」
「事前に伝えてある通りよ。簡単な検査だって聞いてるわ。検査内容は全て私の了承を取って頂戴。それから、無理に実行しないで頂戴。それと……」
 男は、困ったように苦笑いをした。
「信頼されてないんですね、わかってますよ。ご安心ください」
「心配なだけよ」
 それを世間では信頼してないと言うのだが……俺は内心、そう思いながら男の顔を見た。目が合ったので、軽く会釈した。
「では、こちらにどうぞ」
 俺と満嗣さんは、それに従って続いた。
 案内されたのは、それなりの大きさのモニターがある休憩室のような部屋だ。広さは恐らく6畳くらい。真ん中にダイニングテーブルと椅子が用意されていて、そこの上にインスタントの飲み物とポットとお菓子が用意されていた。
「ここでお待ちください。お手洗いは、出て右の突き当りです。モニターで検査の様子が確認出来ます」
「休憩室?」
「雑務室ですかね。常に、目を話せない状況はありますから。チャンネルは、この子の検査室に合わせておきますので、他は見ないようにしてくださいね。極秘ですから。まあ、念の為リモコンはお渡ししませんけど」
「仮にも警察ですしね」
 男は笑った。
「そんな、捕まるようなヤバい事はしてませんよ」
 男は、ウサ子の頭を撫でた。
「えっと……ウサ子ちゃん、だっけ。じゃあ、パパはここで待っててくれるから、検査に行こうか」
 ウサ子は嫌そうに首を振ると、俺にしがみついた。
「ウサ子に、今の状況はわかりませんよ。俺が言い聞かせます」
 俺だって怖いさ。信用し切れない。けれど、必要な検査なのは確かだ。満嗣さんが攻撃的なのも、どこかこの異様な雰囲気を感じているからかもしれない。
「ウサ子、待ってるから。ウサ子に病気がないか、お兄さんが診てくれるんだよ。いつものお姉さんと違うし、いつもの場所と違うけど頑張ろうね。パパ見てるから、なんかあったらパパを呼んで」
 ウサ子は、少し間を置いて、こくりと頷いた。
 ウサ子が俺の手を離れ、男の手の中に収まった。なんだろう、これで最後かもしれない嫌な気持ちになった。
「では、また後程」
 男は何事にも動じない様子で、ウサ子を抱いて部屋を後にした。
「本当に、大丈夫ですかね」
 俺の口から、ぽつんと本音が零れた。
 満嗣さんは、テーブルの上のお菓子を手に取るとそれを食べた。
「信じるしかないじゃない。なんかあったら、すぐ助けに飛び込むわ」
「そうですね、その為にここにいるのだし」
「まあ、最初はウサ子ちゃん以外は入館禁止みたいな事言ってたんだけど、あんまり私がうるさいからきっと、気を使ってくれたのね。まあ、その辺は信用出来るんじゃないかな」
 と、思いたい。
 暫くして、真っ暗だったモニターに電源が入った。真っ白な服に着替えさせられたウサ子の姿が映し出された。
 ずっと見ていたけど、心電図的なものやレントゲンみたいなものとか、そういう基本的な検査の姿か映っているだけだった。
 特に心配はしていなかったのだけれど、夕方くらいになってから、先程の男が険しい顔で部屋に来た。
「柏木さん、直ぐに検査をして頂けませんか?」
「は?」
 満嗣さん自身も意味がわからないと言った顔で、眉間にシワを寄せながら疑問符しか出せなかった。
 俺は俺で、黙ってその場にいるしか出来ない。
「何よ?」
「ウサ子ちゃんから、例の物質が見つかったのですが……これが少々厄介でして。後程詳しく御説明致しますので、大至急検査を」
「お、俺は……」
「人間には影響がありませんので、このままこちらでお待ちください」
「あの、ウサ子は?」
 俺の質問を無視して、男は満嗣さんを引っ張るようにして部屋を出て行ってしまった。
 俺は、とりあえず椅子に座った。衝動的に、気付かないうちに立ち上がっていたようで。
「なんなんだよ」

 

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