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SF・ファンタジー・ホラー

マスクエリア 第五覆面特区〜二章 崩壊の足音(3)

   

新月が大西たちを、専用訓練場に案内したのは、黒鳥会の面々に、特別の意図を感じ取ったからだ。大西は、新月の思惑通り、防音設備の整った空間で、訪問の真意を語るとともに、仮想敵への対策を提案する。だが、まさに訓練が始まろうとしたその時、島全体に脅威が襲いかかってきた。

 

 大西を先頭に、縦一列に並んで歩く黒鳥会の面々は、新月たちと、ぴったり五歩分の間合いを保ち続けていた。一歩踏み込んだだけでは、お互いの武器が届かない距離である。
 相手を警戒するとともに、過度な緊張を与えないよう配慮された結果のように、新月には思われた。少なくとも、未熟でがさつな人間が選べる間合いではない。
「素晴らしい設計ですこと。流石はマクベスの名を冠するだけありますね」
 無言で歩む新月の後ろから、大西の声が響く。純粋な感動を示した、邪気のない口ぶりだ。
「『飾り立てる銅像よりも有意義な体育施設を、それがマクベスのマクベスたるゆえんなのだから』と、代々言い伝えられているらしいですね。もっとも、私共は外様ですので、設計された意図までは分かりかねますが」
「そのまんまの意味しかないでしょう。皆が使うところなんだから、銅像なんて邪魔なだけだよ」
 と、新月に茶々を入れた佳代の声に反応し、男たちが低く控え目な笑い声を上げる。応接室でいきなり襲いかからなかったことといい、どうやら黒鳥会の側に、はっきりとした敵意はないらしい。つまり彼らは、「特に恨みはないが、どうしても任務を果たさねばならない」的な、特別な使命感にかられているわけでもないということになる。
(ふむ、まあ、大体察しはつきますね。だったら……)
 一般訪問者用に設置された様々な体育施設群を抜け、特別メンバーが使用する、ワークアウト・ルームに入った新月は、ほんの一瞬左右を見回してから、部屋の隅の壁に刻まれた、溝の前に立ち止まり、その隙間に、ポケットから取り出したカードを差し込んだ。
 すると、小さな電子音とともに、壁が溝を中心に、左右に開かれていく。その先にあるのは、小さなボクシングジムほどの広さがある、マクベス一門専用の訓練場だ。
「ここなら充分でしょう。どうぞ、お入り下さい」

 

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