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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

探偵の眼・御影解宗の推理 【嘆きの双子】18

   

 京介は高校卒業して経済学を学ぶため大学へ進学。

 美咲、美幸は高校卒業後、花嫁修業を教養される。より城里家にふさわしい嫁として習わしを心得る。双子は精進していた。どちらかが嫁ぐための試練なのだから。

 19歳の暑い夏の日のことだった。

 学校が夏休みにはいると京介が久しぶりに帰郷した。ゆっくりと時間がとれるそのあいだに誕生日をむかえることになる。

 三人はある約束をしていた。上京した京介が帰ってきたとき、美咲と美幸のどちらをえらぶか決めなければならなかった。

 そして、ついに京介が思いついた計画が実行されることになる。

 美咲と美幸はすでに同意の上だった。

 双子の乙女は自分が誕生日プレゼントとひと言つぶやいて、全裸になった。

 京介はその白きつややかな肌に抱きついた。

「すきにしていいよ」

 乙女は脱力してすべてをゆだねた。

 京介は無言のままその姿態に巻きつくように何度も抱いた。その日から何度も、誓いを重ねては抱いていた。

 京介の脳裏にははっきりと鮮明に文字が浮かんだ。

“染野の娘を抱いた”。

 乙女は京介の子供を身籠った。京介も許婚と認めていた相手をないがしろにするわけがない。懇願していたことだ。これこそが子供のときに抱いた理想の図式といえる。

「美咲」と京介はベッドのうえで、女の耳もとで囁いた。

 月明かりが淡く照らす室内は薄暗く、美咲が覆い被さるように京介の上に乗っていた。

 美咲はまぶたを閉じて必死に腰を振っていたとき、京介は部屋の隅に視点が止まり気づいた。

 美幸がドアの隙間から覗いていた。

 京介はそれを知っていながら最後まで行為をつづけていた。美幸の闇に光る瞳の視線が感じる。それすらも快感の道具にしていた。むしろ、口角があがりみせつけるように笑みを浮かべるのだ。

 疲れ果てた男女は乱れたベッドのうえで無造作に丸まった毛布や布団の中で美咲はひとつの山のような固まりになっていた。

 静寂が包む京介の部屋にかすかな息づかいをする愛すべき美咲以外に人の気配に気づいた。

 まぶたを開けると、ベッドの脇で女が立っている。

「んっ、美咲か」ぼんやりとかすむ眼前の存在に名前をいうと、こたえた。

「ええ、そうよ」

 美咲が京介のからだに覆い被さった。淡い月灯りがひきしまった美咲のからだを妖艶なまでに照らしていた。

 唇を交わす。たしかに美咲の唇だった。やわらかくとてもいい香りがする。もう何度もあじわっている唾液でもある。

 美咲は静かに微笑んでいた。まったく疲労感がない。深夜だというのに、この魔女のような顔に驚きを露わにした。

 企み、恨み、危惧、畏怖、邪念を含めた笑みとは対象の者に身震いさせるほどの何か取り返しのつかない非現実感を与える。そしてその表情から脈打つ鼓動の高鳴りが異様な雰囲気をかもしだす。疲れ果てるまでセックスをしたのにも関わらず、なおも求めてくる美咲の貪欲さに京介は迎えうつことにした。

「わかっている」京介は愛の囁きをかわした。

 その言葉に覆い被さる“美咲”は眼に涙を潤ませる。

「なぜ、泣いている?」京介は美咲を見上げると顔に涙が滴り落ちていた。

「うれしくて──」

 こうしているのがうれしいのは京介もおなじだった。歓喜の涙は突然わっと噴出すものだ。理由などいらないのかもしれない。

 精いっぱいの愛を受け入れた瞬間だった。

 京介は一瞬だったが美幸のことを考えた。のぞき見ていた美幸はどうしているのか。

 どちらかを選ばなければならない苦悩が京介を追い込んでいた。

 しかし、美咲を受け入れた。それはただ、美咲がさきに京介の部屋にいたからだ。

 京介にとってはどちらでもいい。おなじものがふたつある贅沢さを体感できることはない。しかし選ぶのはひとつだけだ。

 それが法律のさだめ。

 しかし、京介は考えた。

“どうすれば二人を手に入れることができるのか?”。
 
 

≪つづく≫

 

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