幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

SF・ファンタジー・ホラー

ロボット育児日記☆最終回☆

   

 少し遅くなったのだけれど、満嗣さんを実家に案内した。
 母さんは、満嗣さんを見るなり声を上げた。
「あら、霞。そんな汚ったないマフラーあげて、失礼じゃないの」
「?」
 と、疑問符を飛ばす俺と満嗣さんに、母さんはズンズン入ってくる。
「なくしたとか言ってたのに、ちゃんと持ってたのねえ」
「母さん、呆けた?」
 母さんのボディーブローが、綺麗に俺の腹へと収まった。悶絶する俺。
「母さん、まだ呆けてませんよ。大体、これは母さんが作ったものなんだから」
「え?」
「やあねえ、この子ったら。この子の方が呆けてるわ。若年性アルツハイマーなんじゃないの? あんたか小学生に上がったとき、そんなに立派なプレゼントが出来ない代わりに作ってあげた、母さんからのクリスマスプレゼントじゃないの。気に入ってずっと持っててくれてたのに、中学の時なくしたーって呆気なくどっかやってきて。で、何処にあったの?」
 俺は、何も言えずに口を噤みながら満嗣さんを見上げた。ふと目が合って、笑いを堪え切れなくなったのは俺も満嗣さんも同じだったようで、2人その場で大笑いした。
「おかしな子ねえ。そんなんじゃ、捨てられるわよ。こんな立派なお嫁さん、来てくれるなんて。貴女、なんて言うのかしら?」
「柏木満嗣です」
「柏木さん、こんなんでいいの? 後悔しても遅いですよ。早く入りなさいな」
 母さんも、なんだかんだ言いつつちょっと照れてるように見えた。
 父さんは居間で、緊張して座っていたのだが、満嗣さんを見て持っていた湯呑みを落とした。
「お父さん、何してるんです。みっともない。そんなことなら、散歩でも行ってきてください。邪魔だから」
 相変わらず、母は強い。
「霞から、聞いてますよ。こんなダメ息子の元に嫁いでくださって、本当にありがとうございます。不束者を通り越して、不束過ぎるダメ過ぎる息子ですが、どうかお尻を叩きながら支えてやってくださいな」
 酷い言われよう。
「私は、幸せになれると思います。さっき、運命を知りました。多分、彼と一緒になる導きだったんだと思います。全てが」
 女は女優とはよく言ったもので、満嗣さんの母さんへの挨拶の清楚っぷりが凄い。けど、俺はいつもの少し意地悪そうな満嗣さんの方が大好きだ。自然で、楽しそうで。これから、もっといろんな顔が見れるのかなあ。
 その日は実家に泊まって行くことになっていた。先日の事件で休めなかった分の休暇を、満嗣さんは今回取ってくれたようで、久しぶりにゆっくり出来ると笑っていたのだが。
「結局、ゆっくり出来そうにないわね。式場見たり、考えたり、挨拶したり、何かと忙しいものなのね」
 眠るウサ子に布団を掛けながら、満嗣さんは笑っていた。
「あの、無理しなくても。もう少しゆっくりでも、俺は大丈夫です」
「大丈夫よ。もう余計な気を遣うのは止めましょう。私、少しはママらしくならなきゃね」
「満嗣さんは、どんな家庭にしたいですか?」
 ふと気になった。
 容姿も地位も仕事も満たされた彼女が、一体何を求めるのかを。
「そうねえ。普通の家庭がいいかな。私がいて、あんたがいて、ウサちゃんがいて。一緒にご飯食べて、お休みは何処かに遊びに行くの。それだけで、私は満足だけどなあ。あんたは?」
 俺も。等と答えたら怒られそうなので、少し考える。けれど、やっぱり同じ答えしか浮かんで来なかった。
「すみません、やっぱり俺も同じです」
 けど、満嗣さんは笑っていただけだった。
 本当に幸せ者だ、俺は。
 色々あったけど、終わりよければ全てよし! とは、昔の人はよく言ったものだ。
 それに、今回のことで、ちょっとやそっとの出来事じゃ驚かなくなった自信もある。少しだけど。
「俺も、成長しないと。守る者ができたから」
 多分、この言葉は満嗣さんには届かなかっただろう。だって、言うのは止めて自分の中で誓った言葉だったから。
 
 

END

 

-SF・ファンタジー・ホラー
-, ,


コメントを残す

おすすめ作品

アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編 第37話「二人の母」

   2017/12/14

探偵の眼・御影解宗の推理 【嘆きの双子】22

   2017/12/14

カゲギョウ

   2017/12/13

生克五霊獣-改-3

   2017/12/13

怪盗プラチナ仮面 22

   2017/12/12