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SF・ファンタジー・ホラー

アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編 第35話「動き出した時」

   

 
「あいつは赤ん坊の頃、体が弱かったんだ。今の姿からは想像もつかねぇだろ!」
「ええ……そうですね」
「一年のほとんどを家の中で過ごしていたあいつが、五歳になった時のことだ。突然、体の成長が止まり、意識を失ったんだ
「体の成長が止まった……!?」

 私は思わず身を乗り出した。
 。何を言うまでもなく、すぐにそう思った。人の体は成長し続けて、老いていくものだ。それが、止まってしまうだなんて――――。

「そんなことが……ありえるんですか……?」
「……俺もスウェナも混乱したさ。しかも、それ以来シアンは一度も目を覚まさなかったんだ」
「! なっ……十年間って……ま、待って下さいッ」
「ああ、ありえない。だが、現にあいつはそうだった。それがどういうことかわかるか?」
「…………」

 私は首を横に降って、師匠を見つめた。
 師匠は何故私にシアンの秘密を語るのだろう。本人でさえ、つい先程聞いたような話を――――それよりも深い話を何故私に。自分の息子の重大な秘密のはずなのに。

「ですが、今は普通に成長しているように見えますが……」
「そうだ。『ある日』をきっかけにあいつは目覚め、止まっていた時は動き始めた」

 師匠の金色の瞳が夜月に照らされる。

坊っちゃんが現れた日だ

 私は目を見開いて、自分の両手を見つめた。
 ルイスがアグランドへ来たことで、シアンの時が動き出したのだとしたら、彼は一体いつから、何をどこまで知っていたのだろう。シアンの正体に気づきながら、妹である私を託したのだろうか。

「……兄様……」

 ――――彼は、いつからこうなることを知っていたのだろう。

「師匠……シアンは……」
「……シアンは、人間じゃない

 想像していた通りの答えだったけれど、そう口にした師匠の表情は、今まで見てきた彼のどの表情にも当てはまらなくて、とても辛そうだった。

「やめて下さい。そんな顔をしないで……」
「ハハッ……俺も歳だな」

 師匠の手を握り、私は微笑みかける。

「――――師匠。シアンは、なのですね?」
「……エリザ」
「それか、天使の末裔か。私はそう思います」
「――――『精霊』だ。あいつは、精霊そのものに近づいていってる」
「そのもの……?」
「だが、あいつは亡の欠片を持ってねぇ。つまり、まだ力が残ってるってことだ」
「どういうことですか?」
「英雄姫が精霊を人間にする為に、精霊が持つ力を結晶化させたもの――――……それが亡の欠片の正体だ」
「……――――生き延びた精霊の末裔は、皆、力を失い、人間として血を繋いでいる……――――つまり、亡の欠片を持つ者は精霊の末裔。持たない者は力を保持している精霊そのものだということですか?」
「ああ、そうだ。全ての精霊が力を失ったわけじゃない」
「でも……シアンは師匠の実の息子でしょう……?」
 

 

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