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アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編 第35話「動き出した時」

   

 
 シアンが精霊そのものなのだとしたら、英雄姫が存在した頃から今までずっと生き続けているということになってしまうが、先程師匠はシアンの出自を明かした。あれが全て偽りだったとは思えない。

「あなたの子が、何故精霊そのものだなんて……」
「…………」
「師匠ッ」
「あいつには精霊の話はしていない。旅の道中、いつの日か知ることになるだろう。その時は……頼んだぞ

 ぐっ、と唇を噛んで、私は言葉を飲み込んだ。

「……わかりました」

 一瞬の迷いも見せない瞳を見て、私は彼の手を離す。

 師匠はシアンを精霊だと言った。
 だが、私にとっての彼は人間なのだ。

「必ず、彼と共に真実を――――」

 私は立ち上がり、師匠に抱きついた。私にとって、師匠は父のような存在だから。

「暴きます」
「……ああ」

 シアンを私の犠牲にはしない。そう強く誓った。

***

 皆で朝食を済ませた後、私は身支度をしてから、庭へ出た。今日は少しだけ頑張ってみよう。そう意気込んでいると、スウェナの菜園を見て、佇むシアンを見つけた。
 彼の黒髪は光に当たると少しだけ青色に透ける。それがどこか不思議で、美しい。

「シアン、そこで何をしているの?」
「……おー、エリザ」

 そう言って振り返ったシアンを見て、私は目を見開いた。慌てて彼へ駆け寄ると、精一杯背伸びをして、彼の頬に両手で触れる。

「シアン、大丈夫!?」
「はっ?」
「大丈夫なのっ?」
「な、何がだよ! 気持ち悪ぃ!」
「だって、苦しそうだわ

 私は彼の金色の瞳に吸い込まれるようにして、そう呟いた。

「何か嫌なことでも?」
「……ないよ」
「本当に?」
「…………」

 私が詰め寄ると、シアンは溜め息を吐きながら笑った。

「本当だ」
「わかったわ。信じます」
「それよりお前、何か用あったんじゃねーの」
「あ、そうね。もう行かなきゃ」
「はあ? おい、まだ昼前だぞ。どこ行くんだよ」

 シアンに腕を掴まれると、私は自分の髪をくるくると弄った。そして、苦笑いを浮かべる。

「ごめんね、シアン。ついて来ないでもらえます?」
「ああ!? 何だと!?」
「あっ、違うの! 変な意味じゃないわ! ただ、これは私が一人で頑張らなくてはいけないことだから……」

 やっと話す勇気が持てたのだ。今、話さなければ、と次にいつ会えるかわからない。彼女達に会いに行く途中で、島民に責め寄られる可能性は大いにあるが、それでも私は行く。
 だが、私の真剣な瞳を見ても、シアンは引き下がらない。

「お前の会話に一切口出さねぇ。それならいいか?」
「シアン……」
「じゃなきゃ勝手について行くし勝手に喋るぜ?」
「……っ、わかったから、見ているだけにしてちょうだい」
「りょーかい」

 私は無言で歩きだす。背後にシアンの気配を感じながら、ナナマーロンの家を目指していた。
 
 

≪つづく≫

 

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