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ハートフル

モモヨ文具店 開店中<最終回> ~モモヨ文具店とかふぇ みょうが~

   

 
【かふぇ みょうがでご飯食べてます! 一緒にどうですか? 大人五百円 子ども無料 モモヨ文具店にご用の方はかふぇ みょうがまで!】

 ミニ黒板からグレードアップした立て看板に今日も昨日と同じ文句と、ちょっと考えてオススメA定食の絵柄を描くとそのときだけ、モモヨ文具店の方は空っぽになる。
 馴染みになり出した子やお母さん、お父さん、近場のおじいちゃんおばあちゃんたちに混じって「定食Aお願いしまーす」と厨房にお願いすると、フリースクールから帰ってきた琉華ちゃんが「定食A入りまーす!」と元気よく注文を繰り返す。琉華ちゃんは勉強よりもかふぇ みょうがのバイトの方が性に合っているらしくて、ときどきタカにあの味付けはどうなっているのだとか、あのおじいさんの家まで出前をしたらどうか? とかそんなことまで言うようになっていた。
「おばさん、今日もここででいいの? 二階行ってうちのご飯食べればいいじゃん」
 一番安い定食Aのプレートを運んできた琉華ちゃんがこそこそっと耳打ちするから、「郷に入っては郷に従え。フリースクールで習ったでしょ?」と返すと、あっそと笑われた。ごゆっくり。りいかももう来るよと手をひらひらさせて厨房に戻っていく。
 この二つの店を開くとき、タカと決めたのだ。誰も特別扱いはしないようにと。自分たちもこの店でみんなと一緒にご飯を食べようと。笑ったり怒ったり泣いたりしたことを訊きながら、ご飯食べるのもいいじゃないかと。琉華ちゃんは、けっとそっぽを向き、りいかちゃんは一緒のご飯を食べられることに喜んでいた。
「おばちゃーん!」
 りいかちゃんが二階から降りてきて、琉華ちゃんが階段下でちいさい身体をキャッチしてわたしの前に座らせた。
「おばちゃん、定食Aだよ。りいかは?」
「うーんとね、みにびーがいい!」
 あいよ! と琉華ちゃんが注文を取っていく。 
「今日はなわとびしたんだって? どうだった? 跳べた?」
「じゅっかい跳べた! でもねー、むずかしいんだよー。おばちゃんとべる?」
 足をばたつかせながらいろんなはなしをしてくれる。
 高校受験を待たないといけない琉華ちゃんとは違い、りいかちゃんはもう保育園に通っていて(今は幼保一体型というものが主流で、りいかちゃんが行っているほしぞら保育園も、ほしぞらの名前だけ残して年齢が上がると幼稚園になる)とても元気が良いですと連絡帳に書かれるほど、りいかちゃんはふくふくしてよく笑ってくれている。
 担任の先生にはりいかちゃんの事情を説明し、さらにわたしとタカの関係も説明した。実の両親から虐待を受けていてまともに食べられない状態にまでなったこと。タカが戸籍を作ったこと。わたしたちが面倒を見ているが、タカとわたしは事実婚で、結婚していないこと。ほしぞら保育園の年配の園長先生は、こめかみを揉んでいたが、「そういう考えなんです」ということを伝えて、伝えて。なんべんも伝えて、しまいには「わかりました! 大丈夫です! 理解しましたから!」とまで言われるくらい伝えて(むりやり)わかってもらった。それが閉店セールのあいだに起きて、結果が出たのが一月に入ってから。急いで手続きをして、入園許可は先月。商店街を走り回って入園用意一式を取りそろえ(実はここでもうミシンが使える直くんに手伝ってもらっている。どうしてもスモックの替えが三枚、揃えられなかったのだ。直くんはアップリケをつけてくれたり、名前を縫いつけてくれたりと良い仕事をしてくれた。仕事の話はしなかったけれど、きっと大丈夫だろう。顔色が明るかった)慌てて入園した。
「いじめるやつがいたらぐーで殴ってやれ」
 という琉華ちゃんの元気すぎる送り出しを受けて、りいかちゃんはサーモンピンクのスモックを着て、お迎えのバスに乗っていった。

 

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