幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

ハートフル

モモヨ文具店 開店中<最終回> ~モモヨ文具店とかふぇ みょうが~

   

 
 かふぇ みょうがの開業時間は朝六時から夜十時。休憩はあるけれど、タカは買い出しや仕込みにあてたり、りいかちゃんの迎え、町内会、商工会などでいつもばたばたしている。琉華ちゃんのヘルプが入っても追いつかないくらい忙しくなっている。わたしのほうも店のこと、商工会やら、イベント企画などで相変わらすばたばたしている。琉華ちゃん、りいかちゃんの面倒は分担してみていたが、琉華ちゃんがお風呂に入れたり、寝かしつけていた。(基本的なことは松野沢にいるあいだにタカが教えていたようで、すんなりできていた。ところで、りいかちゃんがおばちゃんと寝たいということで、わたしがりいかちゃんの寝かしつけに行ったのだけど、一緒に爆睡してしまって様子を見に来た琉華ちゃんにこっぴどく叱られた。それでもときどき一緒に爆睡しながら寝かしつけに行っている。タカをご所望の場合は、わたしが厨房に立つ)
 そのため夫婦そろってあれやこれやができるのは、かふぇ みょうがが閉店したタカの夕食時か、お互いお風呂に入ったあとになった。
 今晩は、お風呂に入ったあとで、どてらと半纏を羽織って、モモヨ文具店のだるまストーブでするめを炙って、秘密のお酒を楽しんでいた。この時間に来たラッキーな人はするめと一合プレゼントされる。
 琉華ちゃんとりいかちゃんはすでに寝ていた。枕元にはしっかり明日の用意がしてある。
「あっという間だなあ」
 イカをくわえたタカが本当にびっくりしたようにいうので、「なによ」と返すと、「いや、移転する前もしてからも。俺たち、ちゃんと生活できるな」と心からびっくりしました! という顔で言うのでふきだした。でも、ちゃんと実感が伴ってきて、じわじわじわじわ身に沁みると、ほーっとため息がもれた。
「そうねえ。本当にそうだ。わたしたちのすったもんだもなんとかなったし」
「琉華とりいかもなんとかなってる。というか、俺が生きてこられたことも、モモに会えたことも、今、不思議となんとかなってるんだなあって思った」
「この世は苦娑婆っていうけど、やっぱりそれあっての喜びなのかしらねえ」
「いや、案外わかんないぞ。極楽浄土なのかもしれない」
 ええっと苦笑いすると、タカも言い過ぎだったかと笑った。
「琉華とりいかがさ」
「うん?」
「毎日俺たちが追いつけないスピードで成長していくんだ。昨日できなかったことが今日。今日できなかったことが明日にはできるようになってる。すごいなあって思ったよ。俺にはとうてい真似できない」
「今日もすっと圭くんの案内したし。最初、琉華ちゃんもりいかちゃんも怖がってダメだったのよね……。わたしたちは、かつての時間を外から知るのね。――琉華ちゃんとりいかちゃんと一緒になれてよかった」
「これが家族ってやつかね?」
 タカが秘蔵の日本酒を呑みながら言う。目尻が赤く染まっていた。タカの酔いはこれだけだった。
「当ったり前じゃーん! 頑張ってよー、おじさん!」
「モモもな」
 深夜のモモヨ文具店に酔っ払いの笑い声が響く。
 ビーッとブザーが鳴って、のっぽの男の子が表で手を振った。
「お、誰かと思ったら平岩さん家の優登くんじゃん。いらっしゃーい。イカ食べるー?」
 今晩もお客がまたひとり。
 

 ここはモモヨ文具店。そしてかふぇ みょうが。それがわたしたちの居場所。
 また、いつでもいらしてください。たくさん、お話ししましょう。
 わたしたちのあれこれと、これからのことを。
 
 

最終回 モモヨ文具店とかふぇ みょうが CLOSED

 

-ハートフル
-, , , , , ,


コメントを残す

おすすめ作品

アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編 第37話「二人の母」

   2017/12/14

探偵の眼・御影解宗の推理 【嘆きの双子】22

   2017/12/14

カゲギョウ

   2017/12/13

生克五霊獣-改-3

   2017/12/13

怪盗プラチナ仮面 22

   2017/12/12