幻創文芸文庫 (β)

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ラブストーリー

渚-nagisa-(4)

   

弘樹が診療所へと連れてきた外国人は、診察室を出る頃にはスッキリとした表情になっていた。彼は自分を助けてくれたタケルと弘樹に向かって自分の国の言葉で話し掛けたのだが、弘樹はそれに対し、全く違う解釈をしていた。

 

第4話 人助け

 意味の分らない事を言う、外国人を見て、二人はどうしてよいのか分からず、診療所の待合室で、お互い顔を見合わせていた。

呆然としている二人の様子を見て、男はさらに続けた。

「うえはいず、ようすこう?」

 暫くの沈黙の後、引きつった顔で弘樹がタケルに話しかけた。

「おいおい、さらにワケの分らないことを言い始めたぞ。『上は伊豆、揚子江』って……伊豆と揚子江ってことは、この人は地理について質問してるんじゃないか? 多分そうだよ」

「でも伊豆と揚子江って何の関係もないじゃないか……。伊豆は静岡だし、揚子江は中国にある川の名前だろう?」

 タケルが呆れた表情で弘樹に向かって言った。

「多分、日本と中国がごっちゃになってるんだよ、この人。だって欧米人がアジア人を見たら同じ顔に見えるって言うじゃないか。それと同じで、日本に揚子江があると思ってるんじゃないのかな……」

 弘樹は先程までの引きつった表情ではなく、どこか自信に満ち溢れたような笑みを浮かべていた。

「じゃあ、あの人がさっき言ってた『上は10号、愛護とは救う』は何なんだよ?」

 タケルが自信満々の笑みを浮かべている弘樹に向かって尋ねた。

 

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