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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

探偵の眼・御影解宗の推理 【嘆きの双子】19

   

 染野の双子娘と京介は許嫁として親同士が決めていた。

 どちらでもかまわない。親からしてみたら政略結婚。だが、京介はどちらかを選ぶ権利よりもどちらも欲しくなっていた。

 19歳の夏。ついにその選択するときがきた。

 静かにドアが開く。ひとり京介は自室にいる。そこへ現れたのは美咲だった。

 その夜、二人は愛し合った。未来を築くための決意を固め、ベッドの上で揺らいでいる。

 出遅れた美幸はこっそりと覗いてしまった。いらなくなった自分の置き場が失われ、発狂しながら山の奥地へ消えた。

 美幸がとる選択は…

 

 城里財閥の傘下で家族ぐるみの付き合い。染野の双子の娘と将来どちらかと京介の許嫁になることを親同士が決めていた。

“顔も体も血液も細胞も感情も心も精神までもが同じ”。

 京介はどちらを選んでもかまわないと染野の親から冗談まじりにからかわれていた。

 19歳の誕生日の晩。京介はひとり寝室で電気も点けずに月光をあびながら呆けていた。

 扉がギシッとひらいた。通路の灯りが逆光していたがそこには美咲か美幸のどちらかが立っていた。
 
 

 それから数時間後に、美幸が京介の部屋へおとずれた。美幸は誕生日プレゼントを渡しにきたのだ。

 扉がすこし開いていた。こっそりと中をのぞいてみた。そして目撃してしまった。美幸の表情は悪鬼のごとく憎しみだけが増大していった。

 ほんの一瞬の遅れをとっていただけで。

 京介と美咲が裸でベッドのうえで交わっていた。美咲が嫁いでしまうなら美幸の存在価値はない。だがもうどうにもできない。

 ドア一枚挟んでそのなかの空間では未来が築かれようとしていた。その製造途中をのぞいてしまった。

 これほどの絶望感は美幸はこれまであじわったことはない。心の奥底の悪意が目を覚まし、本心からの咆哮をあげた。

「わたしひとりだけ孤独になるのはいや、いやぁぁぁぁぁー!」

 山奥に走り吠えた。居場所を見失った。どこにいくこともできず、どこに帰ることもできない。このさきどうやって生きていけばいいかさえみえない未来。絶望しかない美幸の目の前に広がるのは断崖絶壁だった。

 根の深い女の行き場のない怒りの果てというのは、こういう顛末になるのが筋書きどおりだろう。

 美幸ですらそう執筆する。

 単純に美咲がさきだっただけで、逆になってもおかしくない。

 京介はたださきに抱いたのが美咲だった。美幸でもそれはかまわないことだった。

 運命が動きだしたことで、不要になった美幸の存在をかき消すかのように、朝方の濃霧は深みを増して白く広がり、朝陽が昇るころには美幸のすがたはそこにはなかった。消えてしまった。

 崖から落ちたのかさえ、その痕跡はなにもない。
 
 

 翌日、美咲と美幸は笑顔でにこやかにみつめあうのではなく、敵意剥き出しににらみあっていた。

 互いに無言で鼻息で吐き捨てた。「ふん」すれちがうように背をむけあった。

 記憶がよみがえる。幼き日の遊び。とても思い出にのこっていた。

「美咲と美幸どっち当てゲーム!」

 京介を相手に毎日試していた。服装を同じにして髪形も同じにして、母に内緒で化粧も同じにしたが、おなじような化け物顔になっていた。それでも京介はゲームを毎日かさねていたせいか、当てる確率をあげていった。

 だれも見きわめることができない。両親でさえ適当に呼んでは戸惑っていたのを覚えている。それはいまも同じだけど…京介だけはちがう。

 かならず双子のちがいを…言い当てるのだった。

 京介は笑顔で見きわめ答えた。「きみたちを愛しているからね」

 美咲は純粋すぎる京介の笑顔に毒を抜かれた。「わたしも愛しています」

 美幸はそのときいつもいなかった。このときから運命はきまっていたのかもしれない。

 

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