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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

探偵の眼・御影解宗の推理 【嘆きの双子】19

   

 御影が咳払いをして躊躇うようにいった。

「次に、お話しするのは今回の一件です。この封書をだれが投函したかです」

 探偵は封書を手にした。封書が重なっているようにも見える。まるでトランプカードを手でずらすようにして、二枚の封書が並ぶ。

 下手な手品を見せられている気分になる。

「これは──」御影は手品師になったつもりで話しはじめた。「一枚は探偵事務所に送られてきたもの」左手に持つ。「こっちは」右手で持つ。「わたしが作成したものです」

 なに、と京介は疑惑を投げる。「どういうことかねそれは──」

 美咲は頭を右手で押さえる。都会の人間とは意味不明なことが多くて付き合いきれないといった様子だ。

「前回こちらにうかがったとき、わたしが作成したこの封書をみなさんに見せました。それは本物のこの」左手を挙げる。「封書が群馬県の消印になっているからです。私が作成したのは消印が長野県にしておきました。つまり、ほんとうは群馬県の消印が本物だったのです」

 京介はすぐ反論する。「だから、それがいったいなんになるんだ」

「つまりこれは美幸さんに成り変り、同県ではなく隣接する県で投函することが目的だった。なぜならこの封書を送った人物は長柄さんだった」

 京介は目の色を変えた。「それが復讐の計画の第一段階だったと」

 城里家を脅かすための嫌がらせしかない。

 御影は認めるようにうなずいた。「長柄さんは自分の復讐のためにここへきたとしたら、その時点で雇ってしまったあなた方、城里家の裏切り行為を認めながら働いていた、ということだ。胸中お察ししますよ」

 京介は目の上のたんこぶを覗いていた。長柄の顔が浮かんでいた。

「そんなあ──」美咲は信じられずにいた。声は掠れていた。

「城里家の名に傷をつけおって」京介は歯をむきだしに怒りを露わにした。

「証拠もあります」輪都が、例の店のテープから長柄が店舗内にいることを実証している画面を印刷したものをみせた。それはわりと鮮明に映し出されていた。「消印の前日の画像です。もし反論があるならまず答えていただきましょう。このときこの場所で長柄はこの封書を投函した。切手を店で買って貼り付けてね」

「いくら古我への復讐だからって、私たちまで裏切っていたなんて信じたくない」美咲は日常の家政婦としての働きと胸中の狂乱さが相まって動乱していた。

「でも長柄さんはこれをする理由があった。けして単独でこんなことをする必要がなかった──」御影は淡々と言った。ついに手品の種明かしのように。

「だれかに頼まれたのか」京介の形相が変わった。睨み殺すような目つきで家族内の裏切りに制裁を食わしたいような顔に変貌する。

「そういうことです。自分たちの存在意義に疑問をもち、なぜ存在しているのか。人生経験を積んでいくと、だれにもいえない秘密が心に増えていくものです。そしてそれは親ですらしらない。子供だけがもつ秘密になる」御影は意味ありげにいった。すると視線を徐々に双子の方へむけていった。

 自然とその視線に誘導されるように京介と美咲は誘われてしまった。

「陽太と美姫が…、手紙を送るようにいった張本人だと」京介はあまりの驚きに声も途絶え途絶えになっていた。

 双子は能面のように微動だせずにうつむいていた。まるでその場にいないようなふりをしているが、確実に御影の眼には存在を認めていた。

「顔をあげなさい。嘆きの双子──」

 いちばん嘆いていた双子はこの二人だった。
 
 

≪つづく≫

 

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