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アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編 第36話「告白の時」

   

「そして、全てが終わったその時は……私が王家を代表して、責任を取ります」

『アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編』
【毎週更新】

第36話「告白の時」

 

 
 私は、この島で暮らす人々に嘘を吐いていた。だが、彼女達はあの日、プランジットから来た男と私のやり取りを聞いて気づいたはずだ。私がカーネット王国の王女なのだと――――。
 恨み言を言われる覚悟は出来ているけれど、彼女達はきっとそんなことはしないだろう。私を気遣い、無理をしてでも笑顔を作るかもしれない。私はそれが何より一番怖かった。

 感情は抑えれば抑えるほど、失われていく。
 忘れようとすればするほど、傷ついてしまう。

「エリザ、お前……本当にいいのか?」

 シアンの手が私を引き止める。彼は私の覚悟をどこまで知っているのだろうか。私が今まで何を失ってここまで来たか彼は知っているはずなのに、何故引き止めるのか理由がわからない。

「……どうして止めるの」
「怖いんじゃねぇのかよ」

 彼はいつも素直な言葉を私にぶつける。私がどれだけ逃げようと、シアンは私の本心をいとも容易く見つけてしまう。

「……私、隠してたの。王女だということを」

 王族だと明かすことで島民から責められることが恐ろしかったわけではない。ただ、もう誰も巻き込みたくなかっただけなのだ。姫としてではなく、一人の人間として彼等と関わり合いたかった。誰も覚えていなくていい。腰抜けの臆病で無力な王女は死んだ――――そう思われたままでよかった。

「でも数日前、プランジットの生き残りが兄様を探してここへ来た。キールを浚ったその男を私が抑えたわ

 そう言うと、シアンは目を見開いた。

「彼は残り少ない自分の命を兄様の手で断ち切ってもらう為に、アグランドへ来たの。最期は――――私が看取りました」
「おま、え――――……何で……」
「泣き叫ぶ私のことを、島民達は……黙って見つめていたわ」

 皆の為と言いながら、私は逃げていただけだった。あの目で見つめられた瞬間、言葉が出て来なくなってしまったのだ。

「せめて、兄様に対する誤解だけでも解きたいの。彼は……一度たりとも逃げたりなんてしていないもの」

 シアンの顔を見上げて、微笑む。

「これでいいの。どれだけ非難されようと……蔑まれようと……私はこれからも生きていくよ」

 シアンは私を泣かせないと言った。
 シアンは私を守ると言った。
 ――――彼は、嘘を吐かない。

 眉を寄せて、私をじっと見つめた後、シアンは私の手を離した。

「ああ、死なせねぇよ。あいつに会わせるまでは」

 彼はそう言って、不器用に笑った。だが、次の瞬間、その目が鋭く細められる。

「? シア――――」
おめー等何見てんだ?
「きゃっ」

 シアンはそう言って私を背に隠した。
 

 

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