幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

歴史・時代

生克五霊獣-改-

   

 年月が流れると、声を上げるしか出来なかった男女は、立って歩く事が出来るようになった。
 富子と藤緒を合わせること、また子供達を合わせることは、星が何を示しているか分からない以上危険行為だとして、離し、隔離し、生活させ育てた。
 それぞれ母が育て、松兵衛が教育した。
 乳母や侍女が殆ど存在しないのは、恵慈家の秘密を守るため、代々守られてきた事柄だった。
「では、恵慈家の力の話をご説明しましょう。これは、あなたがこれから覚え取得し、守り受け継がねばならぬこと。心しなければ、ならぬのです」
 それぞれ2人の子供に、松兵衛は丁寧に繰り返し説明をした。
「そもそも恵慈家の力とは、太古の昔に現れたという金色の七色に光る龍から授かったもの。恵慈家の御先祖とは、即ち龍神なのです。そして、それは己の中に眠る龍神の力で、自然を操ること。時に雨を降らせ、火を生み出し、風を吹かせ大地を眠らせ、そして悪に制裁を加える。星をよんで吉凶を知り、民を救い土地を豊かにすること。それが恵慈家の宿命です。その力は代々恵慈家の血に宿り紡ぎ続ける。血は薬のように、それを与えられた者にも宿るのです。けれど、気を付けねばなりません。この力は毒にも薬にもなるもの。人々を救うだけではなく、土地をこの世を滅ぼすことすら出来るもの。だから、無闇に血を与えてはなりません。与えなければならない時は、よくよく考えるのです」
 幼き頭には、何度言っても理解は出来ない。それでも、物語のように覚えていった。

 更に、数年の月日が流れると、またもや問題が生じた。

 正室である富子の嫡男、晴明はるあきが、どう修行しても法力を扱う事が出来ないのだ。術が使えない……跡取りとして、最も致命的な欠点であった。その代わり、晴明の武芸は才能、天才とうたわれるほどに、メキメキと腕を上げていった。もはや屋敷に、否、里に晴明の相手を出来るのは松兵衛以外いなかった。
 対する藤緒の娘である葛葉くずはだが、その法力は恐ろしい程に強く、齢七つの段階でして既に全ての呪術を習得してしまう程である。中でも、彼女の最も得意とする癒しの力は、どんな怪我でも病気でも、生きてさえいれば立ち所に治してしまった。
 その力で人を助けるようにと、藤緒は法眼の許可を得て、彼女を村の民の医者として働けるように手配した。
 最初のうちはよかった。誰も反対するものもおらず、葛葉もこれが天命だと思っていたから。大好きな母の願いと、正室になれる筈でありながらなれず、肩身の狭い思いをしてきた母の為になれるのならと精一杯頑張った。
 加えて言えば、側室の娘として産まれた段階で自分が当主になる事は有り得ないと思っていたから。
 また、葛葉は酷く武芸が苦手だった為なのもある。母藤緒もおばあ様だった人もそのまたおばあ様も、自分を守る技くらいは得ていたと聞く。それすらも、葛葉には難しかった。
 葛葉の力は、たちまち村で評判となり、1年もしないうちに彼女は人神のように扱われる事になった。
 恵慈家の龍神様の生まれ変わりとはやし立てられた。
 そして、晴明の法力が無いことすら何処からとも無く噂として広がった。
 晴明が松兵衛に連れられて外を歩くと、ヒソヒソと後ろ指さされている気がする。
 ただの被害妄想だったのかもしれないが、正室の嫡男でありながら子供ながらに肩身が狭かった。
 
 

≪つづく≫

 

-歴史・時代
-, , , ,

生克五霊獣-改- 第1話第2話第3話

コメントを残す

おすすめ作品

クリーンゲーム

   2017/12/15

アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編 第37話「二人の母」

   2017/12/14

探偵の眼・御影解宗の推理 【嘆きの双子】22

   2017/12/14

カゲギョウ

   2017/12/13

生克五霊獣-改-3

   2017/12/13