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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

探偵の眼・御影解宗の推理 【嘆きの双子】20

   

 居間に二人はもどる。警察から連絡がくるかもしれない。電話の前で待つことが最優先事項である。

 執事や家政婦がその箱を片づける。玄関に置いておくわけにもいかない。中をあらためみすぼらしい段ボールを片づける必要があるからだ。これだけの立派な屋敷にふさわしくない段ボールをきらってのことだ。

 段ボールに貼られてある伝票をみるが届人の名前や住所は明記されていない。一方的に伝票にサイン家政婦にさせて「ありがとうございました」と物静かに言って去っていったと話した。

 執事はふいに不可解さを抱いた。

「さっきの配達人はいったいなんだ」不審におもいながらも、玄関の重量物に怪訝な視線をおくる。

 主の京介は「放っておけ、いまはそれどころではないだろ」と一喝されたが、そうもいかない。

 しかたなく、残された執事や家政婦がおそるおそるダンボールを開ける。

 執事、家政婦はその中身を見て驚愕した。呼吸も微弱になるほどのどがつまり硬直する。そして悲鳴があがる。だれもが見たら驚くのはとうぜんだ。いい意味でサプライズ的なものだったら驚きのあとにこみあげる感動から涙を流すか笑顔があふれるだろう。

 このサプライズは落胆というべき代物だ、悲愴すぎる涙が洪水のようにあふれる。

「旦那さま、旦那さま…」

 執事が叫ぶ。家政婦は感嘆の悲鳴をあげていた。

 居間にいる主と妃は廊下から飛び込んでくる悲鳴に耐えきれなくなる。

「なんだ、騒々しい」ドアを開けてたしなめる。

 京介の顔は鬼気迫るかのように余裕は微塵も感じられずにいた。

「たいへんです。先ほどの荷を開けてみたら…」

 蒼白している執事の顔をみて、いやな予感が走る。そして執事の口が象った。

「まさか、そんなわけないだろ…」目を見開く京介の顔はゆがみきっていた。

「ご自分の目で…」執事が首が垂れる。「自分たちはこれ以上、直視することはできません」

 京介は玄関へ。美咲はその異常な形相に気づきトボトボと遅れて玄関へ向かう。

 キエェェェェェ、恐怖におののき尻込みして倒れ、泣き崩れる主だった。

 美咲はその目で疑問が及ぶ。

「なに、いったいどうしたのよ。こんなときにその段ボールになにがあるの──」

「奥さま」執事が抑制する。「近づかないほうがよいかと思います…」

「なにをいっているの、あなたは──、なんだっていうのよ」

 泣き崩れる主人。身を引き口を両の手でふさぐようにしている家政婦たち。段ボールの上部を開けて中をのぞき見たようだが、その中身に興味がわく。落胆するようななにかがその中に入っているのか、笑みをこぼしていた。

「わたくしも…」近づき開く段ボールの中を見る美咲は一瞬で蒼白した。「えっ」

 その眼で確認した中身は人を象ったものがふたつ。むきあうようにしまわれていた。

 狂気のような悲鳴をあげて緊張感がはじけ飛んで倒れこんでしまった美咲。ほんの三分前に時間が戻ればこの恐怖は体験せずにすむ。だが無情にも現実の時計は進むことが役目だった。

「奥さまが気絶して…旦那さま…旦那さま──」家政婦が困惑していた。
 
 

≪つづく≫

 

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