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ノンジャンル

needless mind-third organize-

   

音楽なんて、1人でやっても楽しくない。
それを、瀬名に分からせてやりたいんだ。

KNOWS結成までの軌跡、最終話。

彼らの歴史は、ここから始まる。

 

「本庄君・・・・?」
「なんだ、紘士。知り合いか?」
 複雑そうな表情で、瀬名は頷く。
 無理ないよな。結局俺らが会話したのはあの揉め事の時以来で、互いの名前だってクラスの自己紹介で知ったんだから。
「ども、クラスメイトの本庄真哉です」
「あ、もしかして入学式の時紘士のこと助けたのって君?」
「翔・・・・っ!」
 ずいっと身体乗り出して言う先輩に面食らってたら、瀬名が先輩を引っ張って引き止める。
 助けたって、小川の事かな。でもまぁ、あれはあの教師の態度が気にくわなかったってのも大きな理由だし。
「やー、こいつすげぇ人見知りでさ。良かったら仲良くしてやってよ」
 って、すげー笑顔で言われたら、拒否なんて出来る訳無い。
 なんとなく、クラスメイトの中では気になる奴だったし。俺としては大歓迎な訳だけど。
「まぁ、よろしくって事で」
「・・・・別に、僕は1人でも」
「こら、紘士!せっかく友達が出来そうなんだから、ちょっとは愛想ってもんを出せよな」
「余計なお世話ですよ!」
 ・・・・まぁ、なぁ?1人が好きな奴なんだろうなってのは見てて分かってたけど。
 この明るくて感じのいい先輩と、一体どういうつながりなのかがいまいちよく分からない。
「そうだ、俺の自己紹介がまだだったな。友永翔太、3年だ。紘士とは幼馴染ってやつなんだ。よろしくな」
「はぁ・・・・よろしくお願いします」
 ええと、そもそも何の話だっけ?だんだん頭が混乱してきた。
「えーと、友永?こっちも無視しないでほしいなーなんて・・・・」
「あ、ワリ。ええと、これ、俺の幼馴染で瀬名紘士ってんだけど、多重録音が趣味で1人でいろいろやってんだ。基本作った音がメインなんだけど、それをバンドで再現すんのは可能だろ?」
 どよめき。そんなに作曲できる奴に餓えてんだろうか。
「すげー。今年の1年豊作じゃね?」
「そうそう、友永。今聴かせてもらったんだけど、こっちの本庄君が外部でバンドやっててね、そこで曲作ってるんだって。聴いてみてよ」
 言いながら、先輩はさっきのラジカセの再生ボタンを押した。
 さっきと同じ曲が流れて、なんとなく緊張する。
 自分でも作曲してるっていう瀬名になんて思われるのか、興味はあったけど怖かったんだ、と、思う。
 4分弱の時間が過ぎて、曲が終わったとき。友永先輩と瀬名は、実に対照的な反応を示した。
 何だっていうと、先輩は普通に「いい曲だ」って褒めてくれて、それは嬉しかったんだけど・・・・
「これ音がずれてますよね。まとまりが無いというか」
 そうおっしゃってくださったのは、瀬名だった。
 そりゃ、俺もちょっと気にはなってたんだけど。
「どういう形態で録ってるんですか、これ」
「どうって、とりあえずギターとベースしかいないから、クリックに合わせて録って、後から俺がドラムとキーボード作って足したんだけど。クオリティ低いのは承知の上だ。なんかあるならついでに指摘してよ」
「・・・・中途半端に合成するから、こんなことになるんですよ。割り切って全部作りこんだ方がよっぽど収まりが良くなるんじゃありませんか?」
 確かに。瀬名の言いたいことは、一理ある、気はする。けど。
「それじゃ駄目なんだよ。俺がやりたいのは『バンド』であって、1人で完成度の高い音作って満足することじゃねぇんだ。今はメンバーが足りないからこんなんだけど、ちゃんと揃って生の音で出来れば絶対もっとよくなる筈なんだ」
「あいにく僕はバンドに興味が無いので。完成度の高い曲が作れれば、それで」
 うっわ、言い切りやがった!
 それって、俺らのこと全否定してんのと同じことだ。
「えっ、紘士!そりゃねぇって。俺、お前作曲キーボードでオリバンやりたくて連れてきたんだぜ?あとはギターとベースとボーカル居れば完璧だって」
「聞いてませんよ、翔!とにかく僕は興味が無いんです。そんなにバンドがやりたいなら、曲だけあげますから他を当たってください」
 取り付く島も無いとはまさにこの事だ。何で何で、と取りすがる先輩をものの見事に無視してのける。

 

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