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アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編 第37話「二人の母」

   

「精霊の力を宿す彼もまた、ルイス同様危険な目に遭う可能性がある。本人が力の有無を知らされていない以上、彼を守れるのは私だけ」

『アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編』
【毎週更新】

第37話「二人の母」

 

 
 涙を拭いて微笑んだその瞬間、ナナが私を抱き締めた。突然の温もりに私は目を見開く。そして、マーロンはそんな私の手を取ると、深く頭を下げて地面に涙を落とした。

「何を……な、何で私を……」

 彼女達の――――母親としての温度が優しすぎて、私の止まっていた涙が再び溢れだした。

「やめて下さい……!」
王女様こそもうおやめに……!
「!」

 マーロンが叫んだ。私がナナから少しだけ顔を離すと、マーロンは私の手を自身の額に押し当てる。そして、何度も何度も涙を溢す。

 カーネット王国では、相手に敬意を示す時にその者の手の甲を自分の額に当てるという風習があった。それは、身分を越えて行われる。

「王女様……」

 私は首を横に振ってその行為を拒む。

「だめっ、マーロンさん!」
「姫様は何故、孤独であろうとするのですかっ! あなた様は一人ではないでしょう!」
「ナナ……さん……?」

 私は一人ではないけれど、一人でも戦うと決めた。孤独であろうとしているわけではない。持ち得る全てを懸けて戦うということは、そういうことではないのだろうか。

「そうです。私は一人ではありません。そうわかっているけれど、でも……私は……一人になっても諦めない」

 何千、何万という人達に引き止められても、私はこの戦いをやめないだろう。取り戻すまで、私はこの手に犠牲になった者達の魂を抱き続ける。

「王女様……」
「なんてことなの……っう……こんなに小さいお体で、争いに巻き込まれて……お可哀想に」

 私の背中を撫でながら、時折嗚咽を漏らしてナナは言った。強く私を抱き締める彼女からは、殺意も悪意も感じられない。

「どうして黙っていらしたのですか……? 姫様を責める者などおりませんよ……?」
「そんなわけがありません! 私が原因なんです! 国がなくなったのも、全部! 本当は私のせい……兄様は悪くない……!」
「ええ、存じております。殿に罪などありはしませんわ」
「っ」

 『両殿下』――――。

王女様もカーネットをお捨てにならなかったではありませんか

 私の頬に残る涙の痕をなぞると、ナナは微笑みながらこう言った。

「姫様が私達の為に勇気を振り絞って下さった。それだけで、私達の願いは十分報われました」
「王女様、生きていて下さってありがとうございます。これ以上の幸福はございません……」
「ッ……」
 

 

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