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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

怪盗プラチナ仮面 23

   2017年12月19日  

 殺人者の群れが襲撃してきた。

 トローネル少佐とリベロは敵の手にかかった。吾輩は吹雪の中、奪われたマレーネを取り戻すため馬を駆り立てた。

 

 

*   *   *

 ヴィシェフラド城から駐屯地に戻ると、トローネル少佐は出張名目のドナウ流域調査について「適当に報告書をでっちあげておくから気にするな」と吾輩に告げて執務室に入った。彼とはその後顔を合わせないまま、丸一日が過ぎた。

 出張帰り翌日の夕刻、その日の教練で目立って成績の悪かった新兵二人に小言を言っていた時だった。廊下の奥から複数の殺気だった声が響いてきた。

 新兵に待つように言って廊下に出ると、衛兵たちが血相を変えて走っていく。その先にはトローネル少佐の部屋があった。

 大隊長室の方から事情を知った顔の上等兵が通りかかったのをつかまえ、話を聞くと、少佐が拳銃で頭を撃ったのだという。

 吾輩は上等兵を放り出して大隊長室に走った。実は、前日から胸騒ぎはしていた。しかし情けないことに、それを真面目に考えるほど吾輩はまだ自信を深めていなかった。トローネル少佐にも警告を与えておいてしかるべきだったのだ!
 

 大隊長室の前には衛兵が二人立っていて、入口は固く閉ざされていた。少佐の安否を尋ねると、衛兵は首を横に振った。

「遺体はまだ中にあって検視中だ。誰も通すなと言われている」

 自殺であろうはずはなかった。殺されたのだ。白昼営内に入り込み、個室にいる上級士官を殺害するなど普通はあり得ないが、仮面の継承者となった吾輩には疑う余地がなかった。

 銃と外套、正副の仮面が入った雑嚢を手に、周囲の不審を招かぬよう静かに営舎を出た。厩舎に入って前々日使った馬に鞍を置き、手綱を引いて何食わぬ顔で門に近づく。

 幸い、番兵と敬礼を交わしただけで営門を抜けることができた。営門を10歩ほど離れたところで背後を確かめてから、吾輩は騎乗して馬に鞭を入れた。
 

 トローネル少佐が殺されたなら、同じことはリベロたちの身にも起きている。馬に駆り立てながらヴィシェフラド城の方角に意識を集中すると、リベロたちを襲っている殺人者たちの姿が明確なヴィジョンとなって脳裏に映し出された。

 雪が降っていた。既に厚く積もっていて、馬は思うように駆けてくれなかった。センテンドレを経てドナウ川沿いに城山を目指す行程は2日前と同じでも、状況は大きく変転した。もはやトローネル少佐はいない。

 一種の「特務」を帯びてリベロに同行するなどという、虫のいい話を敵は許してくれなかったのだ。
 

 

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