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SF・ファンタジー・ホラー

マスクエリア 第五覆面特区〜二章 崩壊の足音(4)

   

 緊急用の避難経路をひた走る、新月、佳代、大西、そして黒鳥会のメンバーたち。だが、敵は、秘密であるはずのこの通路にも着々と歩を進めていく。
 大西たち、黒鳥会のメンバーが盾となってくれたために、敵の追撃を凌いだ新月たちだが、二人きりになった彼らの前に、更なる追手が迫る。

 

 大方の特区に備わっている、緊急用の避難路を、新月たちはひた走る。長い坂を下り終わり、平坦な道になったところで、一本道だった通路に、無数の分かれ道ができた。本来の避難路へ通じる「正解」は、数個。残りは、招かれざる客を地上に追い返したり、捕縛したりするための罠だ。一般市民用の避難経路を行き来するためのルートも、今は閉じられている。一般人がこの特別な経路に進入し、要人の避難を邪魔することや、逆に要人を狙った重武装の兵たちによって、一般人が狩られないための措置だと、新月は館の主から聞いている。
(良い選択だったと言うしかないでしょうね)
 どこかで「自分たち」と「その他」を区分けするマクベス一門の姿勢に辟易しながらも、新月は判断の的確さを認めないわけにはいかなかった。普段の訓練や治安的処置の場で、どれだけ経験を積んでいようと、「大将首」を前にすれば、冷静さを失ってしまうのが兵のサガというものだ。そして、攻撃に直面した状態で、他人をかばうことは困難を極める。最悪、共倒れになってしまわないとも限らないのだ。
「兄貴、十時の方向に人の気配! 結構多いよ!」
 脱落者が出ないように気を使いながらも、できるだけ速度を維持したまま、先頭を維持する新月の背中越しに、佳代の声が響く。迷宮のような地下にいても、「妹」の勘の良さは、普段と全く変わらない。新月は、頼もしさを感じつつ声を張り上げた。

 

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