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ラブストーリー

渚-nagisa-(9)

   

フルーツパーラーを出た純也は、何も言わずに学校の方向へ向かって歩き始めていた。実の姉に裏切られショックを受けているのではないかと思ったタケルは、急いで純也のあとを追うが、いくら早く歩いてもなかなか純也に追いつくことはできなかった。

 海岸沿いの国道までやって来た。純也は海が見渡せる場所で立ち止まった。タケルが追いつくと、純也は自分の暗い過去を語り始めたのだが……。

 

第9話 理由

 店を飛び出した純也を、タケルは急いで追いかけた。
 タケルが純也を見つけた時、純也はすでにラーメン屋の白衣を脱ぎ、いつもと変わらぬ学生服姿になっていた。

 タケルがふとラーメン屋の横を通り過ぎた時、カウンターにもたれ掛かりながら気を失っている大将の横に、キチンとたたまれた白衣が置かれているのが見えた。借りたものはきちんと返す。純也は意外とキッチリとした性格をしているようだ。

 タケルはそう思いつつ、自分の着ていた服も、その横に置いた。そして再び急いで純也を追いかけた。

 早足で歩いて行く純也になかなか追いつかないタケルは、普段、自分がどれだけ運動していないのかを思い知らされた。二人は海岸沿いの国道のところまで来ていた。

 やっとの思いで純也に追いついたタケルが、息を切らせながら純也に話しかけた。

「ちょ、ちょ、ちょっと待ってよ……。水森が君の情報を流していたのを信じるのかい?」
 
 純也は『ああ…… 」と短く答え、さらに歩く速度を上げて、タケルを振り切ろうとしていた。

「ねえ、ちょっと待ってってば……。水森も、何か考えがあっての事なんだよ、きっと。
それに義男の言ってた事なんて気にしなくてもいいじゃないか。過去の事は過去の事なんだし、今がよければそれでいいんじゃないのかい?」

 タケルは自分の言った言葉に、一瞬、ハッとした気持ちになっていた。
 純也にとって今の生活は必ずしも良い状態ではない。
 幼い頃、全国大会で優勝して、甲子園を目指していた野球少年が、手のつけられない不良として皆に恐れられている今は、恐らく純也の望んだ事ではないはずである。

「ご、ごめん……木下の気持ちも考えずに変な事言っちゃって……」

 タケルは申し訳なさそうにそう呟いた。

 

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