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異世界ファンタジー

アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編 第38話「数えきれない」

   2018年1月15日  

「私はもう生きることを諦めない」

『アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編』
【毎週更新】

第38話「数えきれない」

 

 

***

「……シアン、お前もう一回言ってみろ……」

 翌日、険悪な空気が漂う親子を前に私は頭を抱えていた。原因は明らかにシアンの言葉足らずなのだが、それをこの場で指摘すれば火の勢いは増すばかりだろう。どうにか穏便に話を進めてもらいたい。

「師匠、やめましょう。シアンに悪気は……」
「なあ、おい息子よ。聞こえただろ? 聞こえたよな? さっきのをもう一回言ってみろ」
金、もしくは武器寄越せ
「それが人に物を頼む態度か、クソ餓鬼いいいッ!」
「ですから落ち着きましょう! 話が進みませんから!」

 シアンに殴りかかろうとした師匠を慌てて止めると、私は苦笑いを浮かべた。
 そもそもシアンが武器を求めるのは、私が傍にいるからだ。私と共にいれば、二年前のように軍に狙われることもあるだろう。その際に自分の身を守ることが出来なければ、目的を果たすことは出来ない。

「ねえ、シアン。きちんと説明をして? あなた直球過ぎるのよ」
「はあ? 金がありゃ武器が買えるだろ? なきゃ貰うしかねぇじゃねぇか。十分説明になってるよ」
「え……うーん……そうなのだけれど……言い方の問題よ……」

 彼が口にしていることはもっともなのだが、頼み方というものがあるだろう。今後旅をしていく上で、出会う人々全員にこの態度では、悪目立ちしてしまう。

「いい? シアン。人に頼み事をするのに、そんな態度でいてはだめですよ。ちゃんとお願いして」
「……チッ」
「私も一緒に頼むから。ね?」
「…………」

 シアンは不貞腐れたように私を見つめた後、師匠の顔を見ることなく、口を開いた。

「……俺に合う長刀は、親父しか知らないだろ」
「……ああ」
「だから、頼む」

 最初からそう素直に口にすればいいのに――――。

 私が微笑んでシアンの頭を撫でる。するとその瞬間、彼は大きく目を見開いて、私の手を掴んだ。

「え……?」
「…………」

 何故、そんな顔をするのだろうか。

「シアン?」

 泣きそうに歪められた顔を見て、私は思わず呼吸を止める。何と声をかけたらいいかわからない。
 戸惑う私を見つめて、彼は口を開いた。

「餓鬼扱いすんじゃねーよ。餓鬼のくせに……馬ー鹿」
「ご、ごめんなさい」

 いつものように笑い、手が離れた。様子がおかしかったように感じたのだが、気のせいだろうか――――。
 先程の彼の表情が忘れられない私を置いて、師匠はシアンと話を進め始めた。
 

 

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