幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

ラブ・ファンタジー

ユメとアイ【前編】

   

現在の温期が始まる直前の氷期末期、元々同じ種であったヒトが、乏しい川の水を争って戦いを始めようとしていた。東の部族の長の長男ユメと西の部族の長の娘アイは偶然出遭って恋に陥ち、二人は戦いを止めさせようと相談していた。そこへ、アイに一目惚れをしたカミが現れる。

 

 
 カミによって宇宙が創造された。
 数字で現わされても実感できるはずのないほど悠久の時間の経過と共に、宇宙の内部に数千億の銀河を創造され、その銀河のそれぞれに数千億の恒星が創造され、それぞれの恒星が惑星、そして惑星が衛星を保有する。

 さて、太陽系第3惑星の地球に、何故カミが興味を抱いたのかは、理解し難いが、カミは太陽系を創造した後、地球に、太陽光の照射とその奇跡的な温度、また奇跡的な大気成分、或いは偶発的な電磁波の攪乱から芽生えた(カミが全てシチュエーションを構成したかも知れないが)生命の進化を観察し、幾つかの時代の幾つかの種は調整し(滅亡させ)た。
 例えば、古生代オルドビス紀末期からシルル紀初期、古生代デヴォン紀末期から石炭紀初期、古生代ペルム紀末期から中生代三畳紀初期、中生代三畳紀末期から中生代ジュラ紀初期、中生代白亜紀末期から新生代第三紀に、その時代に繁栄した数多の生物が絶滅している。

 太古の地球上で、原因は不明だが、一つであった大陸が約1億5000年前に分裂し始めた(その地殻変動は今尚継続している)。
 それに伴って海流が発生し、その変動の影響で、凡そ100万年の氷河期と凡そ10万年の温暖期が繰り返され、10万年の温暖期はさらに約8万年の氷期と約2万年の温期が繰り返されている。

 20万年前、地球に飛来したカミたちは、地球に生息していた類人猿の遺伝子を操作し、アダムとイヴを創造した。
 ヒトの誕生である。
 カミたちはアダムとイヴに言葉と農業を教えたが、すぐに氷期が訪れる。
 次の温期まで待つ事にしたカミたちは二人を人工冬眠させる。

 10万年後、温期に変わる少し前に二人を目覚めさせ、農業をさせ、ヒトを増やすために生殖を教える。
 そうしてアダムとイヴは、カインとアベルをもうける。
 カインはアダムとイヴに習って農業を、アベルはカミたちから教えられた狩猟を、それぞれ始めるが、未だ氷期であったせいでカインの農業は捗らず、アベルの狩猟は発展する。
 妬んだカインはアベルを殺害し、それを知ったカミたちはカインを地球上の基地から追放する。

 放浪の末にカミたちに教えられた土地に定着したカインは、カミたちの手によって自分の遺伝子から創造された女性と共に、やっと訪れた温期に恵まれ、農業を発展させ、子孫を増やし、都市を形成して行く。
 しかし、2万年後、再び訪れた氷期は世界を激変させる。
 
 長い氷期で農業も捗らず、獣も魚も数が激減し、疲れ果てたほとんどのヒトは怠惰になり、享楽に走るようになる。
 カミたちは、そうした民族を滅ぼす事に決め、地球上に激しい異常気象をもたらし、勤勉であったノアとその家族、そしてヒトの発展に必要な動物種だけを生き残らせ、動物を野に放たせた。
 ノアとその家族は、そうして子孫を増やし、各地に都市を築き始める。(旧約聖書第1章1~第10章5)

 その氷期、現在の温期に続く最も近い氷期の末期の物語である。

 一人のカミが万年氷の張った山の中腹にある湖の畔に立ち、眼下に広がる大地を視降ろしていた。
 年齢は勿論、永遠である(旧約聖書第3章‐22)。
 白い衣で身を包み、大きな木の杖を片手にしたカミは、風貌は堂々とし、いかにも“私はカミである”という風を装ってはいたが、ヒトから視ると、普通の年寄りであった。

 このカミは、実は、カミたちが天地創造を終え、母星に帰還する際、ヒトの娘達に現を抜かし、尻を追い掛け回していたせいで(旧約聖書第6章‐1~4)、宇宙船の出立時刻に遅れ、呆れた他のカミたちに置いてきぼりを喰らわされた間抜けなカミである。
 母星に戻ったカミの最高責任者は、彼を置いてきぼりにした言い訳に、彼に、地球と人類を見守る役を与える。
 独りになったカミは約10万年近く、地球上の各地でヒトが発展して行くのを見守っていた。

 カミの脚元には、広大な平野が横たわっていた。
 その中央を、カミが立っている傍の凍り付いた湖から落ちるわずかな水量の滝に端を発して、平野の果てまで川が流れていた。
 氷期の川の水量は、勿論決して潤沢ではなかった。

 その川の両側に、ヒトの集落があった。
 ヒトは、獣を狩り、木の実を採り、田畑を耕して穀物を作って生きていた。
 元々は同じ種であったが、ヒトが増え過ぎて、川の東と西に分かれて行ったのである。
 それぞれの人の数はほぼ同数、男女が2000ずつ、子供が6000程度であった。

 そして、人が増え過ぎたせいで、双方の田畑に引く為に、多くはない川の水を取り合うようになり、さらに諍いが起こるようになったのである。
 その諍いが起因して、血気盛んな両方の部族の男達が戦いを起こそうとしていた。
 女、子供、老人達は、戦う事に反対してはいた。
 戦いになれば、大勢の犠牲が出る事になるのは、誰でも想像出来た。
 愛すべき夫、慕うべき父、或いは大切な息子を失うかも知れないのだ。

 しかし、日に日に一触即発の緊張は増すばかりであった。
 その様子をずっと観察していたカミは、ふと呟いた。
“愚かな事をする。まあ、この種が絶えても、他の種が発展して行けば、問題なかろう”

 

-ラブ・ファンタジー
-, , ,

シリーズリンク

ユメとアイ 第1話第2話

レビュー

この作品はいかがでしたか?
あなたの感想を送って、作家を応援しよう!

レビューを書く

おすすめ作品