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伝奇時代

生克五霊獣-改-13

   2018年1月18日  

 葛葉による晴明の覚醒の儀式が行われる頃、恵慈家には大きな危機が迫っていた。

 戦国風伝奇ストーリー!

 

 どうせ、無駄な事を今までしてきたのだ。諦めた事なのだから、今更変わらない。だからこそ、暇潰し程度にでも付き合ってやろうか。そうすれば、葛葉も分かることだろうと。そう思った。

 小屋に戻ると、葛葉は護身用に持っていた短刀を取り出した。
「松兵衛の封印を解くには、松兵衛の力を上回る霊力の挿入が必要になるのです。私の血で、松兵衛の力をかき消します。少々身体に負担が掛かりますが、頑張ってください。では、始めます」
 恵慈家の力を挿入するための儀式は、晴明は何度も受けていた。術者の血をもらうイコール生き血を飲むことなのだが、これが辛いのは知っている。それに、暫く熱に魘されることもある。だが、今更引けない。
 葛葉が苦痛に顔を歪めながら、白い首筋に傷を入れた。真っ赤な血が吹き出すように溢れ、それを晴明が直接啜った。
 葛葉の首筋に、熱くどくどくと波打つ痛みの他に、晴明の柔らかい唇と吐息が当たる。彼女には、痛みより心地よく感じた。そして、ふと気付いた。
 ああ、私は晴明殿を好いてしまったのかも知れません。と。これが、儀式でなければどれ程幸せか……。
 暫くして、晴明の顔が離れた。彼が、口元を抑えて蹲る。
「……何度経験しても……慣れぬな」
 晴明の口の中は、生温かい鉄の味で気持ちが悪い。更に、胸焼けが吐き気を誘発していた。
「吐かれても、構いませんよ」
 晴明はゆっくり葛葉を押しのけると、縁側に向かって吐き出した。
 血液と胃液の混ざった異様な反吐が排れると、晴明はぐったりその場に倒れてしまった。
 葛葉は、晴明を引きずるようにして布団に寝かした。その晩から3日、晴明は高熱にうなされ続けた。泰親には、疲労と告げた。
 
 

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