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ラブストーリー

渚-nagisa-(10)

   

タケルは悩んでいた。弘樹に真実を伝えるべきなのか。弘樹が好きな藤森あずさが、実は弘樹を陥れた人物だという事を、話すべきかどうか。答えが出ないまま、いつも待ち合わせをしている場所で待っていたタケルだが、結局弘樹はやってこなかった。タケルは一人で学校へと向かったのだが……。

 

 第10話 迷い

 ハルカの事が一段落したタケルの次の課題は、どうやって弘樹に藤森あずさの本心を伝えるかという事だった。できる事ならば避けて通りたい課題だった。
 このままでは、弘樹は何も真相を知らないまま藤森あずさに好意を持ち続ける事になってしまう。

 いつもならば一緒に学校に通うタケルと弘樹だった。が、今日はいつも二人が落ち合う事になっている近くの診療所に、弘樹の姿はなかった。
 タケルは暫く診療所の前で待っていたが、あまりにも弘樹がやってこないので、とりあえず学校へと向かった。
 
 教室に着くと、そこにも弘樹の姿はなかった。数人の生徒が教壇近くで談笑している。教室の一番後ろにはハルカの姿があった。ふとハルカがタケルの方を見た。目が合ったタケルはニッコリと微笑んだ。ハルカも少し微笑んだように見えたが、またすぐに窓の外に視線を移した。

 タケルは教室を出て、弘樹の姿を探そうと辺りを見回したが、結局、弘樹は見つからなかった。そうこうしているうちに、一限目の予鈴がなり、輪になり話をしている女子の集団や、廊下の外で騒いでいる男子生徒達が教室へと入っていった。その中にも弘樹の姿を見つける事はできなかった。

 タケルは自分の席に着き、カバンから教科書やノートを取り出し、自分の机の中へと仕舞い込んだ。
 一限目の日本史の用意をし、ふと時計を見る。あと一分ほどで一限目が始まる。弘樹は体調を崩して、今日は欠席するのかもしれない。タケルは勝手にそんな事を思っていた。
 
 キーンコーンカーンコーン……

 一限目のチャイムが鳴った。日本史を教える武本が、いつものように、太りすぎてパンパンにはちきれそうなお腹を突き出しながら教室へと入ってきた。

 学級委員の号令に従い、みんな一旦起立をし、武本に礼をしてからザワザワと各自の席へと着席した。

 武本に指示された教科書のページを開き、ひと通り目を通す。中学生の時も、高校に入ってからも、日本史の授業というのは縄文・弥生時代から始まる事にタケルは少しうんざりしていた。

 

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