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ラブストーリー

LOTUS 〜Horror House〜 <前>

   

「このパークのテーマは、おばけ屋敷なんだよ」
「やーだー、おばけ嫌いー」
「大丈夫だよ。たいして怖くなかったってさ」

LOTUS』 ―真理×日向子―
≪光輝*高等部1年生*9月≫

Illustration:Dite

 

 好きすぎて、どうにもこうにも手が出せない。
 手を出すどころか、まだ告白だってしてないし。
 今日もきっと、何も言えずに終わっちゃうんだろう。

 こころ清き愛の人へ。
 そんな素晴らしい教育理念のもと、あと数年で創立100周年を迎える、由緒正しいカトリック系の女子高校。そこの3年3組に在籍する、友人たちいわく「おっとりほんわか天然萌えドジめがねっ娘」な成田日向子は、クラスのちょっとした人気者だった。
 成績はどの教科も平均よりわずかに良い程度、飛び抜けて優秀というわけではなく、課外活動でも目立った活躍をしているわけではないのだが、日向子はなぜか、クラスメイトたちから深く愛されていた。
 これも一種の癒し系と言うべきなのか、「成田さんがいると、な~んか和むのよね~」「弟さんがシスコンになるのもわかるわぁ」という意見が大多数を占めているのである。誰の話でもにこにこと機嫌良く聞くため、話しかけられることも多く、真理でさえ、油断すると挨拶しかする隙がないまま1日が終わってしまうことがあった。
 もっとも、真理のほうとて「女学院のプリンス」「セーラー王子」などというワケのわからない異名を取るほどの、華のある存在なのだ。クラスどころか学年を超えて注目を集めているため、日向子以上にいろんな人にとっつかまり、日向子のほうが遠慮して、終日近寄らないことがあるくらいだった。
 よってこの2人は、親友の域をはるかに凌駕する仲良しっぷりをウワサされていながら、実際には親友の範疇から1歩も出ていないという、何気に清らかな仲なのだった。つまりシスコン光輝の心配は、実質的には杞憂なのである。
「ヒナ……あ、いたいた。良かった、探してたんだ」
「あー、真理ちゃーん」
「ね、明日の約束、忘れてないよね?」
「忘れてないよー。真理ちゃんとお出かけするのってー、久しぶりだから楽しみなのー」
「ホントに? それは嬉しいな」
 努力の甲斐あって、夏休み後の実力テストでみごと指定校推薦の枠内に納まった日向子は、希望する家政大学への切符の8割を手に入れていた。11月の推薦入試当日に盛大なポカをやらかさない限り、まず合格は間違いないだろう。
 そんなこともあって、明日の創立記念日に、連日連夜に渡る受験勉強の息抜きも兼ねて、2人でどこかに遊びに行こうということに相成ったのだった。
 午前中は「感謝のミサ」なる、いかにもカトリック系らしい学校行事が入っているのだが、それも11時過ぎには放免となる。ランチタイムから夕方まで、めいっぱいとはいかないまでも結構たっぷり遊べるだろう。
「でもー、どこに行くかー、まだ決めてないよねー」
「いや、ちょっとね、行きたいなって思っているトコがあってさ」
「どこー?」
「それは明日の」
 真理はふいに日向子の肩を抱き寄せると、その耳もとに「お・た・の・し・み♪」と囁いた。真理特有の、どこかしらハスキーがかった声で囁かれ、日向子の頬がほんのり赤くなる。それを見て、真理はダメ押しのようにパチリとウィンクをかました。
 去年までは何を言っても完璧スルー、無反応もいいところだったのだが、この夏頃から少しずつ――本当にほんの少しずつなのだが、期待通りの反応を見せてくれるようになったのが、何よりも嬉しい。

 

-ラブストーリー

LOTUS 〜Horror House〜<全2話> 第1話第2話

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