幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

ラブストーリー

LOTUS 〜Horror House〜 <後>

   

「姉さん。どうした?」
「怖くて眠れないのー。おねがーい、一緒に寝せてー」
「えっ……いや、それは……………………」

LOTUS』 ―真理×日向子―
≪光輝*高等部1年生*9月≫

Illustration:Dite

 

 やっぱり、どう考えても。
 あの女に、俺の大切な姉さんは渡せない。

 この7月にリニューアル・オープンしたという、東西の「おばけ屋敷」をテーマにしたアミューズメント・パークは、時間に余裕のある大学生あたりが遊びに来ているのだろうか、平日の昼下がりだというのに意外と混雑していた。
「わー、人がいっぱいいるねー」
「みんな新しもの好きなんだよ。女の子も大勢来てるし、要するに怖さのレベルなんて、その程度だってことだよね」
 真理の所感にうなずきながら、日向子はあたりを物珍しそうに見回した。パークの名前は『ウィッチ・ガーデン』、係員の女性たちは、みんなハロウィンの魔女のような扮装をしている。
 パークの入り口や内装も、中世ゴシックな雰囲気は良く出ているものの、怖いというほどのものではなかった。たしかにこれなら、瑠音にも紹介できるだろう。
「それじゃ、和モノと洋モノ、とりあえずひとつずつ入ってみようか。どれがいい?」
 簡易ロッカーに、これももちろん女学院指定の重たい通学鞄を預け、財布だけを持ってエントランスの案内板の前に立つ。パークには占い系を含めて9つのアトラクションがあり、ショップやフードワゴンなどを合計すると、全部で13のコーナーがあった。
 日向子は各アトラクションの名前をじっと見つめると、最も怖くなさそうなのはどれだろうかと、必死になって考えた。
「やっぱりー……みんな怖そうだよー」
「そうかなぁ。例えばこれは? ブラッディ・ゾンビハウス」
 日向子は、彼女にしては珍しく、大慌てでふるふると首を振った。そんなの、タイトルからして遠慮したい。
 日向子はちょっとずれてきた眼鏡を掛け直すと、ぱっと顔を輝かせて「マジカル・フォーチュン」なるアトラクションを指差した。だが、それは占いブースだからと、真理が速攻却下した。
「ね、これはどう? 恐怖の幽霊寺」
「やーだー」
「じゃ、これ。モンスターパニック・死霊の館」
「だーめー」
「だったらその隣の、戦慄ドアーズ。脱出系だってさ。きっとアレだね、途中でキャストの人が出てきて、追いかけられちゃうヤツ」
「もっとだめー」
「ヒナったら。どれならいいの?」
 あきれて言う真理の隣で、日向子はようやく、最も怖くなさそうなアトラクションを発見した。ひとつめが、ミラーハウスをホラーテイストにアレンジした「ミラー&スリラー」。もうひとつが、体感仕様の施してあるミニシアターで、大音量ヘッドホンにてコワイ話を聞くという「真夜中の学園」だった。
 たしかに、案内板に羅列してあるアトラクション名のなかで、比較的「怖くなさそうなもの」といったら、この2つしかないだろう。真理としては、「死霊の館」あたりのベタなアトラクションに行きたかったのだが、日向子がこの場に慣れてくれば、もう幾つか回れるかもしれない。とりあえず入るアトラクションが決まったことに満足して、真理はスッと肘を突き出した。
「では、行きますか、お嬢さん」
「ほんとにすごく怖かったらー、途中でも帰ろうねー」
「了~解」
 日向子がこれならと指定した「ミラー&スリラー」は、ただいま待ち時間10分。実際、アトラクションのなかに入ったら、そう簡単に途中退場というわけには行かないのだろうが、日向子のほうは言質を取って安心したらしい。差し出された真理の腕に、素直に自分の腕を絡めた。

 

-ラブストーリー

LOTUS 〜Horror House〜<全2話> 第1話第2話

コメントを残す

おすすめ作品