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ラブストーリー

恋の足音3

   

翌日、伸吾からのメールに、桃花は複雑な思いに駆られた。
こう何度もメールをもらってしまうと、勘違いしてしまいそうになる。
それを抑えながら、メールや電話をするのも辛くなっていった。
そんな気持ちのまま受けた電話で、桃花は突き放したような言葉を言ってしまい、それきり、伸吾からのメールはなくなってしまったのだが・・・。

 

 翌日、日曜日の朝、いつものように遅くまで眠っていた。何度も目を覚ましたのだが、すっかり暖かくなっているベッドから抜け出したくなかったのだ。
 今日もかなり冷え込んでいるのが分かる。自分の鼻先が冷たい。そこを指で擦りながら、思い切って手を伸ばして、テーブルの上に上げてあるテレビのリモコンを手に取った。
 桃花の部屋は、10畳程の広めのワンルームだ。その中ほどの壁際に置かれたテレビに向かってスイッチを押すと、バラエティ番組がやっていた。チャンネルを回していくと、やっぱり雪祭りの番組があり、桃花はそこでチャンネルを止めてベッドの中から眺めていた。
 ふと目に入った時刻は、11時近い。もうすぐお昼じゃないかと、仕方なくベッドを抜け出して、ストーブを点けた。

「・・・残ってるんだっけ」

 独り言を呟きながら、カーディガンを羽織った桃花は、昨夜テーブルに置きっぱなしになっていた、祭り会場で買ってきた食べ物を冷蔵庫から出した。
 それをレンジで温めながら、テレビをぼんやりと眺めていると、携帯がメールを受信した。
 その音を聞いて、気だるそうに視線を向け、溜息一つ吐いて携帯を取った桃花は、画面を開いて頭を掻いた。
 メールを送ってきたのは、伸吾だった。だが、昨日のような気持ちの高揚はすっかり無くなっていた。そして、メールを開いた桃花は、少しだけ眉を寄せた。

//こんにちは。
 昨日はありがとう。//

 その文章に、桃花は素っ気無い返事を返した。

//こちらこそ。//

 桃花にしてみれば、会話終了といった感じで打ったのだが、いきなり今度は着信音が鳴って、何だと思って受話ボタンを押した。

=桃花さん?=
「うん、どうしたの?」
=起きてた?=

 笑いを含んだ声で言われて、苦笑してしまった。
 休日は確かに遅くまで寝る事にしているが、そんな話はしていないのになと、「起きてるよ」と、桃花も笑って返した。

=俺ね、今、雪祭りの違う会場に来たんだ=

 桃花は、そう言えば第二会場があったなとふと思い出した。今年は場所が変わったという話を、会社の人達が話していたのを聞いていた。
 其処は大通りとは違い、遊ぶ事がメインになっている会場だ。大人も雪上の遊びを体験出来る場所になっている。
 ただ、中々子連れでもない限り、わざわざ足を運ばない場所でもあった。

「一杯遊べる物があるでしょ」
=さっき、スノーモービルで引っ張られてさぁ、すっげー楽しかった=

 幾分か興奮気味に話してくる伸吾に、桃花は小さく溜息吐いた。
 その報告をしたくてメールしてきたんだなと思った。正直、桃花にとってはどうでもいい事であるし、例えば、「一緒にどう?」と誘われても、遠慮してしまう遊びだ。

「楽しんでるみたいね」

 そう言って笑うと、短い返事で伸吾が黙ってしまった。

「皆で、たくさん思い出作りなよ」
=あー・・・うん。分かった、じゃ・・・=

 そう言って切られた電話。桃花は、画面の戻ってしまった携帯を見詰めて、短く息を吐いて、テーブルに置いた。
 変な気分だなと、髪を掻き回す。どこかガッカリしているのだ。
 伸吾は仲間と楽しんでいる、それでいいじゃないかと思うのだが、その伸吾が楽しむ事の要素に、自分が入る事は出来ないんだなと思った。
 厚かましい考えではあるが、今の電話が、『今日、会える?』というものだったらと、心のどこかで思っているのだ。

「・・・やな女」

 台所に向かい、ヤカンに湯を沸かす。お気に入りのマグカップにインスタントコーヒーの粉を落とし、湯が沸くのを待った。

 

-ラブストーリー


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