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ラブストーリー

恋の足音4

   

番号だけの電話が誰の物かは分かっていた。
だが、その着信履歴に、発信する事が出来ずにいた桃花は、前の恋を逃した時の事を思い出す。
その時の気持ちが、伸吾に対して全く当て嵌まってくれない事に気付き、桃花はようやくその番号に発信した。

久しぶりに聞く伸吾の声に、桃花の感情が溢れてしまって・・・。

 

 まだ鳴り響いている携帯。
 桃花は、出ようか出まいか、受話ボタンに指を置きながら考えていた。
 知らない番号から掛かって来る事は、まずない。だとすると、この番号は誰の物なのか。分かっている事だけに、中々指はボタンを押してはくれなかった。
 すると、音が止まった瞬間、いつの間にか激しく鳴っていた自分の鼓動だけが耳に付く。ハッキリと打ち鳴らしている鼓動。そして、何故出なかったんだと、激しく後悔した。
 落としてしまった袋を気だるそうに持ち上げて台所に向かい、買ってきたそれらを冷蔵庫に仕舞ってから、桃花はコートを脱いで、携帯を握り締めてベッドに腰掛けた。
 手の中にある携帯を見詰めながら、着信履歴を開いた。
 二度続いている同じ番号に、気持ちは発信しようとしている。だが、それとは逆に、もう忘れかけていた気持ちなのだから、今更呼び起こす気にもなれなかった。

 携帯を握り締めながら、遠くに視線を投げていた桃花は、伸吾に会う前に逃した恋を思い出していた。あの時は、相手の接触の仕方で、気持ちは大体分かっていた。そして、自分もそれなりに好感を抱いていたから、相手が何か言ってきたなら・・・と思っていた。
 そして、それらしい誘いも受けていたのに、その時は何故か乗り気になれなくて、嘘の理由をつけて延期という形にしたのだが、それきり相手からアプローチをされなくなった。
 だからといって、それを悔やんだ事も、失敗したなと思った事はない。また、悲しんだ事もない。
 なのに、どうして伸吾の事になると、こんなにも気持ちが沈み、もしかしたら伸吾からかもしれない電話を受けなかった事に、悲しくなっているんだろうと、節電で画面が真っ暗になっている携帯に、もう一度視線を戻した。
 仮にもし、このままこの電話を放っておいたとして、前の時みたいに悔やむ事も悲しむ事もないだろうかと思うと、胸が急に苦しくなった。
 無理だ、と、桃花は目から零れ落ちていく雫を、手の平で拭う。既に電話を受けなかった事を後悔しているし、このまま掛けなければ、どんな内容の電話だったのか気になって仕方が無いはずなのだ。
 桃花は、目を手で押さえたまま、履歴の番号にようやく発信した。

 

-ラブストーリー

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