幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

SF・ファンタジー・ホラー

マスクエリア 第五覆面特区〜二章 崩壊の足音(7)

   

潜水艇の中に待ち伏せしていたアラン・マクベスの提案を佳代が拒絶したことで、戦いが始まった。しかし、マクベス本家直系であるアランの力はあまりに強大であり、佳代は、明らかに本気ではなく、しかも酔っているアランに対して、まるで歯が立たない。
そして、佳代の猛攻を軽く凌ぎ、屈服させるまでの過程を「査定」と言い切ったアランによって、元「覆面商事」の二人に、ある指令が下されることになる。

 

「やる気なのはかえって好都合だ。まともな説得が通るほど、こっちは紳士的とは言えないからね」
 アランは、そう呟くと、身構えるでもなく、新月と佳代の顔に視線を向けた。殺気はもちろん、威圧感も、警戒感もない、全く日常と変わらない意識の向け方だった。佳代が、とん、とん、と、軽くステップを踏み、今にも飛びかかるような仕草を見せているというのに、何も反応を示さない。
「ちっ!」
 焦ったような声を出しながら、佳代が一歩前に足を踏み出し、踏み込みの勢いをそのまま活かしながら、アランに向けて蹴りを放っていった。
 横蹴り。敵に対して体を横に向け、股の開きを利用して放つ種類の蹴りだ。一直線に敵に対して素早く攻撃することができる、シンプルだが強力な蹴りである。回し蹴りよりも、脚の描く軌道が短いため、かわし辛い。熟練した空手やテコンドーの選手であれば、ジャブやストレートパンチほどの速さで、相手のみぞおちや顎に強烈な一撃を見舞うことができる。
 しかも、佳代が狙ったのは、アランの膝だった。腰から下を狙った攻撃をかわすのは、よほどの実力差がない限り難しい上、人間の体重を支える膝は、破壊された時点で勝敗が決する、絶対的な急所の一つである。
 しかも膝は、基本的に、骨格が大きく、筋肉や脂肪の絶対量が多いほど耐久力が増す人間の肉体の中で、例外的に巨漢であればあるほど負担がかかり脆くなる部位だ。つまり、鍛え抜いた巨体を持つアランにとっては、絶対的な急所であると言える。その「泣き所」を佳代はついた。圧倒的なウェイト差を逆手にとった、素晴らしい戦術のように、新月には感じられた。

 

-SF・ファンタジー・ホラー


コメントを残す

おすすめ作品

アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編 第34話「それでも――――」

   2017/11/20

探偵の眼・御影解宗の推理 【嘆きの双子】15

   2017/11/20

ロボット育児日記39

   2017/11/17

忠実な部下たち

   2017/11/17

モモヨ文具店 開店中<36> ~帰り行く者~

   2017/11/16