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ラブストーリー

恋の足音5

   

伸吾が、明日のスキーに一緒に行かないかと誘ってきた。
だが、ウェアも何も持ってないと桃花が言うと、買いに行こうと玄関にサッサと向かった伸吾。
慌てて出掛ける準備をして、ブーツを履いて最後に玄関の電気を消した時、伸吾はドアを出るわけでもなく、桃花を見下ろした。
そして、伸吾の顔がゆっくりと近づいてきた・・・。

 

 その手は静かに離れていった。それを見送って、グラスに視線を戻した桃花は、静まり返っている雰囲気に、ぎこちない笑みを浮かべた。

「あのさ?」

 静かな部屋に、伸吾の優しい声が響いた。その声に、桃花は視線を上げると、明日のスキーに一緒に来る気はないかと、誘ってきた。

「俺さ、別にスキー教室受けるわけでもないし、自由行動選んでるから、もし桃花さん来れるなら一緒に・・・って思ったんだけど」

 頬杖付いていた手を外し、自分の口元で両手を組んだ伸吾。それはまるで祈っているような仕草に見える。桃花からの返答に少しだけ緊張しているのが、ほんの一瞬の真顔で分かった。

「何年ぶりになるかわかんないよ?転んで転がって、雪だるまになるかも」
「まさかでしょ?」
「ほんとだよ。短大までは友達と行ってたけど・・・。雪だるまになったら、ちゃんと救出してよね」

 笑いながらそう言うと、伸吾が眉を上げて瞬きした。

「え?・・・って事は?」
「いいよ。だけど、アタシウェアも何も持ってないよ。どうしよう・・・」
「ウェアもレンタル出来るって言ってたけど」

 レンタルか・・・と、桃花の表情が曇る。別にそれでもいいのだが、出来れば知らない誰かが着た物は遠慮したいなと、桃花は思った。

「んー・・・、別に神経質じゃないんだけど・・・、ちょっとレンタルは・・・」
「あ、じゃぁ、まだどっか店開いてない?」

 伸吾は、今から買いに行こうと、腰を上げた。桃花は驚きながらも、手を取られて立ち上がってしまう。そして、桃花にコートを着るように促して、伸吾はサッサと玄関に行って靴を履いていた。

「桃花さん、早く行こう」
「え、ちょっ・・・待って」

 慌てて財布の入ったバッグを持つと、電気を落として玄関に向かった。
 ブーツを履いて、玄関の電気を消すと、伸吾がまだ外に出ようとはしていなかった。こんなアパートの玄関だ。二人も立っていれば、狭苦しい。それに、伸吾は人より大きい。天井に頭が着くんじゃないかという位なのだから、暗闇でも威圧感があった。

「ねぇ・・・」

 小さく響いた伸吾の声に、一瞬ドキッとした。その声に、ゆっくりと伸吾を見上げると、静かに伸吾の顔が近づいていた。そして、唇に違う体温を感じて、桃花は目を閉じた。
 背中に回された腕が、伸吾へと引き寄せる。それに従いながら、桃花は少しずつ閉じていた唇を開き、深い口付けを受け取った。

 

-ラブストーリー


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