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ラブストーリー

恋の足音6

   

朝早くに電話を寄越した伸吾。
「声が聞きたくて」という言葉に嬉しくなる。
そして、スキーを終えたら、桃花の部屋に泊まりたいと申し出た伸吾に、桃花は断る理由もなく、了承した。
スキー場で伸吾と出会えた桃花は、これが終われば泊まりにくるという事が頭から離れず、ぎこちない態度をとってしまい・・・。

 

 翌朝、目覚ましの音ではなく、携帯の着信で目が覚めた桃花。
 テーブルの上で鳴り響いている携帯を、布団から出ないようにして、腕だけ伸ばして掴んだ。そして、画面を開いて相手を確認する。

「・・・今・・・何時?」

 受話ボタンを押すと、元気な声が届いた。

=桃花さん?=
「んー・・・、伸吾君・・・?」

 顔を顰めながら、まだ薄暗い部屋の中を見回し、桃花は額に手を置いた。

=おはよう=

 伸吾の挨拶に、ボーっとしながら、何とか「おはよう」と返すと、電話の向こうから笑い声が響いた。

=ごめんね、こんな朝早くに。なんかさ、一秒でも早く桃花さんの声聞きたくて・・・=

 優しい声色でそう話す伸吾に、桃花の顔がゆっくりと緩められる。そして、口角を上げて寝返りを打った桃花は、欠伸を一つして目を擦った。

=まだ布団の中でしょ。すげー眠たそう=
「ぅん・・・、眠いよ・・・」
=・・・寝顔見に行きたいくらいだけどね=

 少しの笑いを含んで伸吾に言われて、桃花の目がパッチリと開いた。
 思わず赤くなる頬。
 実は、昨夜眠りに落ちるまで、桃花はずっと伸吾の腕にいる妄想をしていたのだ。勿論、それは叶わなかったのだが、思わずそれを思い出して、桃花は一人慌ててベッドを抜け出した。

「あのっ・・・、あれ、何時だったっけ?」

 ストーブを点けながら話を切り替えた桃花は、カーディガンを羽織り、お湯を沸かしに台所に入った。

=8時半に此処出発。どうする?向こうで会うしかないんだけど、俺、全然わかんないからさ=
「アタシもあんまり覚えてないよ?とりあえず、アタシも直接そっちに向かうから、着いたらメール入れるよ」
=りょーかい。ね、今日さ・・・=

 伸吾の言葉が途切れて、桃花は首を傾げながら携帯を耳に押し当てた。

=桃花さんちに、泊まりって・・・ダメかな・・・=
「え・・・?あ、いや、でも、ツアー・・・」
=朝のチェックアウト一時間前に戻れば大丈夫・・・。確認済み・・・=

 遠慮気味に話す声が、少し低い。伸吾の表情に笑みはないのが直ぐに分かった。
 桃花には断る理由などなくて、寧ろ昨夜ずっと一緒に居たいと思っていた。勿論、その先までご丁寧に想像して。
 気持ちが通じてしまうと、どうして身体を求めるのかと、自分を恥ずかしくも思ったが、それでも伸吾のあの大きな身体に包まれたい欲が止められない。

「・・・一緒に居られるの?」
=・・・一緒に居て、いい?=
「うん・・・」
=なんかさ、昨日帰ってから、すげー淋しかったんだ、俺。紳士気取って戻ってきたけど、もっと一緒に居たかったんだ・・・=

 同じだ、と、桃花は口角を上げた。
 同じ気持ちでいた事が、凄く嬉しかった。
 一人、淋しい思いをしていたわけじゃないんだと、胸の奥が熱くなる。そして、桃花は時計を見上げて、用意を始めると伸吾に伝えた。
 電話を切って、短く息を吐いた桃花は、ヤカンが音を立てて火を消すと、コーヒーを淹れる前に、用意を始めた。

 

-ラブストーリー


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