幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

未分類

LOTUS ~Lover’s knot~ <前>

   

「稔、優しい妹がいて良かっただろう」
「おうっ、弟だったら、こうはいかねぇもんな!」
「青柳くんだったら、これくらいはするかもよ?」

LOTUS』 ―稔×瑞穂―
≪光輝*高等部1年生*9月≫

Illustration:Dite

 

 いつまで続くか、わかんねぇけど。
 怒りながらも構ってくれるうちは、俺のことまだ好き?
 「兄ちゃん」の範囲でいいから、俺のこと好きだといいなっ。

「…………はい、できた」
 ちょっぴりどころか大いに恥ずかしいのをガマンして、瑞穂は兄のリクエスト通り、「ハッピーバースデーの歌」を歌いながら、制服の細い黒ネクタイを締めてやった。
 どうせすぐに緩めたり外したりしてしまうのだとわかっていても、1歩下がって、曲がっていないかをしっかりチェックする。そんな日課のあと、瑞穂は兄の16歳の誕生日を祝った。
「お兄ちゃん、お誕生日おめでとう」
「サーンキュ、みっちゃんvvv」
 もし目に見えるのなら、自分に向かって3つか4つ、下手すると5つくらいは飛んで来ているであろうハートマークをすげなく避けて、瑞穂はこれ見よがしにため息をついてみせた。
「夏休みにあれだけ特訓したのに、どうしていまだに自分で結ぼうとしないの? 中等部生のときは自分でできたのに……これだって簡単でしょ」
「だってさぁ、兄ちゃん、みっちゃんからこうやってネクタイ結んでもらわねーと、なんか元気出ねぇんだもん。高等部に入ったら、急にそういう体質になっちまったの! ふっしぎだよなぁ」
「もう、ばかなこと言って。大体、あたしがこうして結んであげても、学校に着いたらすぐジャージに着替えちゃうくせに」
「それはそれ、これはこれ。でも、今日は特別な日だからな。ちょうど体育もねーし、ずっと制服でいよっかなぁ」
「部活動は?」
「んー、今日は見学♪」
「もう、お兄ちゃんったら。小田監督に怒られたって、知らないんだからね」
 別に瑞穂も、兄のネクタイを結んでやるのがイヤというわけではないのだが――というより、実は瑞穂にとっても毎日の大切な習慣ではあるのだが、そこはそれ、本心とは逆のことを口にしてしまうのが、ツンデレっ子のツンデレっ子たる由縁である。
 そんな自分の性格が、ときどき嫌になってしまう瑞穂なのだが、思春期まっただなかの「恋する乙女」なのだから是非もない。それに胸に宿った内緒の恋を守るためには、「お母さんからお兄ちゃんの世話係を任されちゃったから仕方なく」というスタンスを、なんとしてでも保ち続ける必要があるのだった。
「とにかく、お兄ちゃんも今日から16歳なんだから」
「おうっ、成田や野々宮よりちょっとだけ早く『兄ちゃん』になったんだぜぇ」
「そうよ。だからひとつ大人になったっていう自覚を持って、もうちょっとしっかりしてよね」
「んー、頑張る」
 光輝・大樹・稔というシスコン・トリオのなかで、最も早く誕生日を迎えるのは、9月生まれの稔だった。
 野々宮姉弟が「こどもの日生まれ&ひなまつり生まれ」であるのと同様、沢渡家の兄妹も、誕生日のイメージが男女でちょっぴり逆転している。兄が9月生まれの乙女座で、妹が8月生まれの獅子座なのだ。
 無論そんな例はいくらでもあるし、星座や干支でイメージがどうこうなどと言い出したらキリがないのだが――大樹が「3月3日のひなまつり生まれ」に幾ばくかの引っかかりを覚えているのと同様、瑞穂もなんとなーく「あたしのほうが乙女座だったら良かったのに」などと思ってしまうのだった。

 

-未分類
-

アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編 第34話「それでも――――」

   2017/11/20

探偵の眼・御影解宗の推理 【嘆きの双子】15

   2017/11/20

ロボット育児日記39

   2017/11/17

忠実な部下たち

   2017/11/17

モモヨ文具店 開店中<36> ~帰り行く者~

   2017/11/16