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LOTUS ~Lover’s knot~ <後>

   

「あのさぁ」
「なんだよ」
「俺も、俺だけのすっげぇ秘密を話しちまおっかな」

LOTUS』 ―稔×瑞穂―
≪光輝*高等部1年生*9月≫

Illustration:Dite

 

 いつまで許してもらえるか、わかんねぇけど。
 嫌がったり無視したりしないうちは、まだセーフ?
 「兄ちゃん」の範囲でいいから、ずっと好きでいたいんだ。

「沢渡、今日はおまえにひとつ話がある」
「んー?」
 大樹は光輝と一度だけ目を見合わせると、この夏休みから棚橋と付き合い始めたことを稔に語った。稔は褐色のドーナツに大口を開けてかぶりついたまま、大樹の言ったことを理解するために、全身の動きを止めた。
「は、はなひゃん?! はなひゃんほ?!」
「飲み込んでからしゃべれっての。行儀わりーな」
「…………んぐ。野々宮が?! 棚ちゃんと?!」
「そ。念のため言っとくけど、遊びで落としたわけじゃねーからな。長い苦悩と片想いの末に、やっと口説き落としたってトコだ」
「そ……そっかあ」
「オレ、本気だからな。オレにとって棚ちゃんは一生モンだ。どう思ってくれても構わねーけど、光輝とおまえにだけは、知っといてもらいてーんだよ。光輝には、ちょい先に話したんだけどな」
「そっかぁ。なんかすげぇな」
 稔は神妙な顔つきになって、何度もうなずきながら、手に残った黒糖あんドーナツをしみじみと見つめた。
「なあ、そういうことならさぁ、俺も野々宮にオメデトって言っていいのか?」
「へえ、祝福してくれんのかよ。こっちはドン引きされんの覚悟で話したってのに」
「だって野々宮、棚ちゃんのこと本気で好きなんだろ? 野々宮が棚ちゃんのこと本気で好きで、片想いが両想いになったんならさぁ、それってすっげぇ嬉しいことじゃんかよ」
「…………沢渡」
 稔を見つめる大樹の肩を、光輝がそっと叩く。稔は少しだけ――本当にほんのちょっとだけ大人びた笑顔を浮かべると、飲みかけのジュースの缶を掲げた。
「棚ちゃんがOKしてくれて、ほんと良かったなっ。棚ちゃんと幸せになれよぅ! じゃなくて、幸せにしてやれよぅ? どっちでもいいけど、とにかくオメデト!」
「サンキュ、沢渡」
 光輝もコーヒーの缶を前に出し、最後に大樹が缶を掲げる。3人は再び祝杯を挙げ、やがて互いの目を見合わせると、かすかに感じていた緊張をほどきながら声もなく笑った。
「なあ、沢渡。オレのレンアイを祝福してくれた礼に、いいコト教えてやるよ」
「イイコト? なんだ、なんだ?」
「オレらのガッコの『タイの伝説』、おまえも知ってるだろ?」
「あー、あの赤いのと黒いのを両方とも交換したら、2人でいつまでも幸せに暮らせますってやつ?」
 こくりとうなずいて、大樹は続けた。
「アレ、信じてみる価値はあるぜ。おまえも本気の相手がいたら、やってみな。大変でも、ツラくても、おまえも相手も本気なら大丈夫だ。最後にはあの伝説の通りになる」
「そっ……か。あれ、ほんとなのかぁ」
「ま、現時点で中等部の『赤リボン』を捨ててたら、ハナシになんねーけどな」
 ニヤリと笑ってみせる大樹に、稔はまだ大事に持っているとも、もう捨てたとも答えず、「もう1個くれ」と、残っていた黒糖あんドーナツを横合いからさらった。
「…………なあ、もしかして、成田んとこもそうなのか? 成田、青柳のこと好き?」
 ストレートに尋ねられ、光輝はやや戸惑ったものの、やがて顔を赤らめながらうなずいた。

 

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