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ノンジャンル

伝言

   

去年のクリスマスイブ。その日に誕生日を迎えた優斗は七歳になった。小学校に入ってから初めて迎えるクリスマスと誕生日。とても楽しい日になるはずだったのに……。

 

 私はこの状況をいまだ受け入れられないでいた。
 
 去年のクリスマスイブ、その日に七歳の誕生日を迎えた一人息子の優斗。

 私のたった一つの宝物だった優斗。

 いつも優しい笑顔で私の心を和ませてくれた優しい優斗。

 幼稚園で初めて私の顔の絵を描き、母の日のプレゼントと言って、満面の笑顔で似顔絵を手渡してくれた優斗。

 上手に描いたと褒めてあげると、少しはにかんだ顔をしながら優しい笑顔を見せてくれた優斗。

 卒園式の日、名前を呼ばれると、キチンと大きな声で返事をしていた少し勇ましい優斗。知らず知らずのうちにしっかりと成長していたんだね。

 小学校の入学式の時、校長先生の話をしっかり聞いていなくて、皆が座っているのに、一人だけいきなり席を立った、ちょっとおっちょこちょいな優斗。

 初めての運動会。手を思い切り振りながら一生懸命に運動場を走る姿、とてもカッコよかったよ。

 些細な事でパパと喧嘩して涙を流した時、ママをイジメちゃダメといって私をかばってくれた優しい優斗。

 そして、去年のクリスマスイブ、パパとママにとびきり上手なサンタクロースの絵を描いてくれた優斗……。

 楽しいはずのクリスマス……。嬉しいはずの優斗の誕生日……なのに、何も悪い事してないのに……どうして優斗が事故に遭わなければならないの?
 
 できる事ならば、優斗の傍に行きたい。優斗を天国に見送ってからずっと床に臥せたこの状態で、あまり食事をとる事もせず、ずっと優斗のことだけを想い続けて布団に入っていれば、いつか優斗の傍へ行く事ができるのではないか……。私は頭の中で、そんな言葉を繰り返していた。

 

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