幻創文芸文庫 (β)

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ラブストーリー

渚-nagisa-(16)

   

学校の帰り、駅前の本屋に誘われた。

駅前には水森ハルカがアルバイトをしているパーラーがある。しかも本屋へと付き合ってくれたお礼にそのパーラーでフルーツパフェをご馳走すると持ちかける亜里沙。二人で仲良くしている姿をハルカが見たらどう思うのだろうと思いながらも、亜里沙に腕を引っ張られ駅前と向かうのタケルだったが……。

 

渚 第16話 駅前

 駅前へと向かう間、タケルの心の中は複雑な心境だった。もしもこの時間帯に、水森ハルカがアルバイトをしていて、そこへ山本亜里沙と二人で恋人のように入って行ったとしたら、ハルカはどんな態度をとるのだろうか、と、その事ばかりが頭の中を巡っていた。

「武藤君、何か考え事でもしてるの? さっきから足元ばかり見て何も喋らないね。何か心配事でもあるの?」

 タケルより20センチ程背の低い亜里沙が、タケルの顔を下から覗き込むように尋ねた。

「あ、いや、別に何もないよ……。それよりも、本屋ならわざわざ駅前まで行かなくても、学校の近くにもあったと思うんだけど、そっちの方がここから近いし、その方がいいんじゃない?」

「ああ、あの本屋さんは小さいから、私の探してる本は多分ないと思うの。なんだか武藤君、駅前の本屋に行きたくなさそうだけど、何かあるの?」

「い、いや別に……」

「ふーん……なんか怪しいなあ。やっぱり私、絶対に駅前の本屋に行く!」

 タケルの表情から何かを悟ったのか、亜里沙はワザとそう呟き、タケルの腕を引っ張った。

 それから亜里沙と色々な話をしながら駅前へと向かっていたタケルだったが、その話のほとんどが、何を話していたのか全く頭に入っていなかった。またそのタケルの様子を見て、勘のよい亜里沙は、タケルが上の空で話を聞いていることに気づいているようだった。

「武藤君、ホントは私と一緒にいるの嫌なんでしょ。私と長い時間いたくないから近くの本屋で用を済まそうと持ちかけたんでしょ」

 亜里沙がタケルの本音を聞きだそうと、そう鎌をかけた。

「あ、いや、違うよ……。そんな事全然ないよ。山本さんとお話しするの楽しいし……」

「じゃあ何でそんな暗い顔をしてるの? あ、分かった。駅前に誰か知ってる人がいるんでしょ!」

 タケルは亜里沙のその言葉にドキッとした。

「ち、違うよ。そんなんじゃなくて……」

 そのあとの言葉がなかなか出てこない。

 

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