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SF・ファンタジー・ホラー

マスクエリア 第五覆面特区〜二章 崩壊の足音(10)

   

香西が持ってきたロムの中には、裏社会のみならず、表の政治の舞台にも強い影響力を持つと恐れられている、ニュースタイル・マフィアの長、カルロス・カジモトの姿があった。彼は、高倉の身柄を預かっていると言い、それは、高倉が自発的にカジモトの所へと出向いたからだと主張した。

高倉行方不明事件について、あまりにも一方的に思える主張をした上、清水や香西たちも「状況打開のために」カジモトの所に向かえ、というカジモト側の身勝手な物言いに、清水たちは、怒りのあまり声を荒げるが、その反応を見越していたかのように、二人の男が、高倉格闘事務所に現れる。

 

「はじめまして、香西君。君は大した探偵だな。いずれは分かることとは言え、こんなにも早く、私に辿り着くとは」
 映像が再生されたモニターの中で、五十歳になるかどうかという男が声を発している。
 黒いスーツに白いシャツというフォーマルな格好と、顔に刻まれたいくつも見られる傷跡のギャップが、強烈な威圧感を醸し出している。何より、渋みのある整った顔の中央に存在している「眼」に、清水は圧倒されていた。長い年月、暴力の嵐の中に身を置き、その恐怖の原因の全てを、自分の中に取り込んでしまったような力が、彼の瞳には宿っている。ビジネスマン風に整えられた髪型も、迫力を消すための材料としては全く機能してはいない。
「ぬう……っ」
 榊原が唸った。恐らく、清水と同じ印象を、モニターの向こうにいる相手に持ったのだろう。だが、映像から目を逸らすことができなかった清水には、彼の表情は確認できない。
「そう、君の想像した通りだ、香西君。君達のボス、高倉氏が、今、第五覆面特区にいないのは、彼が私のところにいるからだ」

 

-SF・ファンタジー・ホラー


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